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【産経抄】明治神宮の森に学べ 4月7日

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明治神宮の森に学べ 4月7日

産経抄更新

 明治神宮を初めて訪れた人はまず、東京の真ん中にうっそうと茂る広大な森に感嘆の声を漏らす。100年足らずの歴史しかない人工林とは、とても思えない。専門家を率いて森づくりに取り組んだのが、日比谷公園の設計も手がけた本多静六である。

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 ▼本多たちは、常緑広葉樹を主とする原生林の再現を目指した。当時はまだなかった大気汚染にも配慮してある。杉並木にこだわる、当時の大隈重信首相の横やりにも屈しなかった。鎮座100年を迎える2020年には、本多の構想通りの森になっているはずだ。

 ▼同じ年に開催される東京五輪・パラリンピックも、森づくり同様に周到な準備が求められている。にもかかわらず、メインスタジアムとなる新国立競技場の建設をめぐって、今も迷走が続いている。

 ▼ようやく決まった計画案に、肝心の聖火台の設置場所がないとわかったのは、1カ月前だった。今度は、競技場に隣接した神宮球場をめぐる騒動が持ち上がった。大会前後の約半年間、セキュリティー対策や機材置き場の確保のために、使用を停止してほしい。

 ▼組織委員会が球場の「家主」である明治神宮に、こんな要請をしていたというのだ。本拠を置くプロ野球のヤクルトはもちろん、東京六大学野球や高校野球の関係者にとっては寝耳に水の話である。本来なら組織委員会は、競技場の建設が決まった時点で、根回しを済ましておくべきだった。

 ▼本多は神宮の森の100年先を見ていただけではない。生前、独自の蓄財術で作った巨額の資産のほとんどを埼玉県などに寄付していた。それは現在も奨学金として、苦学生の手に渡っている。本多のような人物が、大会を運営してくれたら。口に出しても詮ないグチではあるが。