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【書評倶楽部】女優・麻木久仁子 『魚はどこに消えた? 崖っぷち、日本の水産業を救う』片野歩著

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【書評倶楽部】女優・麻木久仁子 『魚はどこに消えた? 崖っぷち、日本の水産業を救う』片野歩著

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 ■主たる原因は「日本の乱獲」

 消費者の魚離れ。地球温暖化による環境変化。中国や韓国など近隣諸国の乱獲。燃料費の高騰。巷でよく耳にするこれらの言説だが、この中に日本の漁業衰退の「主因」はない。大手水産会社で水産物の買い付け業務に携わり世界の漁業・水産加工業の最前線を知る著者が、その「主因」を喝破する。

 日本の漁業衰退の主たる原因。それは「日本の乱獲」なのである。そんなばかな。日本はちゃんと資源管理をしているはずだと? だが実は、漁獲枠の設定があるのは、約350種の漁業対象魚種のうち、たったの7種だけである。しかもヨーイドンで一斉に漁をして、規定量に達したらやめるという早い者勝ち方式なので、小さい魚でも我先にとるしかない。小さい魚を採ってしまえば高値がつかないだけでなく、産卵の機会を奪うことにもなる。これでは水産資源量は持続的に維持されない。

 本書には、漁業を衰退どころか成長産業に変身させたノルウェーやニュージーランドなどなど、漁業先進諸国の例が次々に登場する。共通するのは「科学的根拠に基づく厳格な資源管理」だ。と同時に、付加価値をつけ高く売るためのマーケティングにも力を入れる。水産加工や流通も一体になった改革だ。要するに「控えめに採って、高く売る」なのである。これらの国々においては高所得が見込めるようになった漁師は若者の憧れの職業となっている。日本は自国の漁業の衰退に手を拱(こまね)く一方でせっせとこれらの国々から水産物を輸入し、かの国の漁師たちの高収入に寄与していることになる。日本の漁業は世界第6位の広大な排他的経済水域を持ち、世界三大漁場のひとつを有し、自国内に充分な規模の市場を持っているというのに、それを生かすこともなくこのまま終わってよいはずがない。本書を通じて一人でも多くの人にこの現状を知ってほしいと思う。(ウェッジ・1050円)

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【プロフィル】麻木久仁子

 あさぎ・くにこ 昭和37年、東京都出身。ラジオ番組「週刊『ほんなび』」などに出演中。書評サイト「HONZ」メンバー。

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