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空冷ポルシェ911はなぜ暴騰しているのか?

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ポルシェ 911
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 空冷エンジンを搭載するポルシェが、近年、中古車市場で暴騰している。とくに911のタイプ930や964は好例である。では、なぜ暴騰しているのか?

2億円超で取引されるモデルも!

 ここ1~2年は沈静化したものの、2015~2017年頃の国際クラシックカー市場は、まさしく“暴騰”というべき市況だった。

デビュー直後の911「Oシリーズ」。
デビュー直後の911「Oシリーズ」。
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 象徴的だったのは、レーシングモデルを頂点に、日本円にして億単位の取引が当たり前になってしまったフェラーリ。あるいは、それまでモデルによっては300~400万円でも充分に購入可能だったはずの空冷ポルシェ「911」が、あっという間に1000万円オーバー級にランクアップしてしまった点だろう。

 今回、かつて比較的身近なクラシック・スポーツカーであったはずの空冷ポルシェが、“高嶺の花”になってしまった理由について、筆者なりに考察したい。

「タイプ930」(1978~1989年)。
「タイプ930」(1978~1989年)。
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 ひとことで“空冷の911”と言っても、1963年から1996年まで実に33年間も生産されたので、歴代モデルは多岐に亘る。

 まずは、もともとは「901」の車名とともに1963年にデビューした「Oシリーズ」から、1977年モデルの2.7リッター水平対向6気筒エンジン搭載の「Lシリーズ」に至る、いわゆる「ナロー」。次に、前後の大型バンパーを終盤のナローから受け継ぎ、排気量を3.0リッター/3.2リッターに拡大した「タイプ930」(1978~1989年)。さらに、エンジンを3.6リッターまで拡大し、エクステリアも格段にモダナイズされた「タイプ964」(1989~1993年)。そしてサスペンションやディメンションにも大幅に手がくわえられた、空冷エンジン搭載最終モデルの「タイプ993」(1994~1997年)に至るまで、4世代にわたって生産された。

「タイプ964」(1989~1993年)。911初のオートマチック(ティプトロニック)や4WD(カレラ4)を設定した。
「タイプ964」(1989~1993年)。911初のオートマチック(ティプトロニック)や4WD(カレラ4)を設定した。
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 いずれのモデルも、2010年代中盤のクラシック カーおよびヤングタイマー クラシックの国際マーケットにおいて、高騰したのだ。

 とくにナロー世代の人気は凄まじいもので、一時はロードカー仕様の「ツーリング」でも1億円を越えた。レースのホモロゲーション用に少数が製作されたライトウェイト仕様の「カレラRS2.7」(1973年)にいたっては、その2倍、2億円超の価格で取引されていた。

「タイプ993」(1994~1997年)。
「タイプ993」(1994~1997年)。
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 タイプ930は、通常の「911SC」や「911カレラ」であっても1000万円前後で流通する事例が多い。

 一方、空冷911でも比較的リーズナブルと言われたタイプ964は、やや人気の低かった4速AT「ティプトロニック」仕様や、この世代で初設定された4WDの「カレラ4」でも500~700万円。「カレラ2」のマニュアル仕様ならば800万円を超え、さらにハードコア版の「カレラ2RS」や「スピードスター」は、最盛期、5000万円前後の正札も見られた。

ライトウェイト仕様「カレラRS2.7」(1973年)。
ライトウェイト仕様「カレラRS2.7」(1973年)。
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 そして、空冷911のファイナルモデルとして、ヤングタイマー・クラシック市場で独自の人気を得ることになったタイプ993は、同等グレードのタイプ964に対してプラス100万円くらいの高価格を維持していた。

 一時期に比べると、空冷ポルシェ911のオークション落札価格や、あるいは国内外のスペシャルショップにおける正札価格は落ちついてはきたものの、それでも、今世紀初頭までの相場からすれば数倍にも相当する価格で推移しているからすごい。

わかりやすいからこそ人気

 ところで、2010年代後半に巻き起こったクラシックカー市況の大暴騰であるが、旧いクルマすべてが爆発的に高騰したわけではない。

 暴騰したモデルは、冒頭で述べたフェラーリやポルシェにくわえて、ランボルギーニ「ミウラ」やアストンマーティン「DB5」、メルセデス・ベンツ「300SL」、あるいはジャガー「Eタイプ」など、いずれも世界の誰もが知る“わかりやすいスポーツカー”だった。

1967年モデルの911 タルガ。
1967年モデルの911 タルガ。
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 そもそもクラシック カーの暴騰は、グローバルな金融業界のバックアップを受けた大手オークショネアやスペシャルショップが、中国やロシアといった新興国のカーマニアたちを対象に、ビジネスを展開したことから、全世界に拡大したと言われる。ちなみに、金融業界によるクラシックカー マーケットへの資本投下を支えていたのは、それら新興国の投資家たちだったとも言われている。

 ヨーロッパやアメリカ、あるいは1990年代のバブル景気を経て目の肥えた人が増えた日本など、いわゆる“成熟市場”では、既にクラシックカーに対する知識も豊富で、人気モデルばかりがもてはやされるようなトレンドではない。逆に、クラシックカーへのなじみが薄い人の多い新興国では、わかりやすいクラシックカー&ヤングタイマーの代表格が人気を集めた。したがって、名車中の名車として誰しもが認める空冷911が人気を博したのだ。

 くわえて成熟した市場でも、目の肥えた上級エンスーにとって、空冷ポルシェ固有の奥深さは、まだまだ探求心や所有欲をそそるのも事実。しかも年々、状態の良い個体は減っている。タイプ993の最終モデルでも、生産終了から23年経つから無理ない。また、排ガス規制が厳しい今、空冷モデルが再生産される可能性がきわめて低いといった事情もあるはずだ。

タイプ993は、空冷エンジンを搭載した最後の911。
タイプ993は、空冷エンジンを搭載した最後の911。
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 今後グローバル市場において、空冷911の相場が大幅に下落する可能性があるとすれば、新型コロナウイルスによる経済状況の悪化など、外的要因に限られのでは? 思う。とはいえ、一時的な下落にとどまる可能性は高い。なぜなら、2010年代に巻き起こったクラシックカー バブルは、2008年に発生したリーマンショック後に起こったかただ。

 したがって、空冷ポルシェ911のマーケット価格は、今後も浮き沈みこそあるかもしれないが、長い目で見れば“高値安定”になるだろう。一定のレベルで推移するのでは? と、予想したい。

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 文・武田公実 

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