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なぜ?当然? アカデミー賞6冠「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が高評価を受けたこれだけの理由

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なぜ?当然? アカデミー賞6冠「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が高評価を受けたこれだけの理由

GQ JAPAN 更新

 「マッドマックスチーム、大健闘よね。『マッドマックス』は2015年で最も高評価を得た作品です。受賞を果たせて、この上なく嬉しいです。この作品は創作にあたっての勇気と根性を必要としました。ジョージ(・ミラー)とダグ(・ミッチェル/プロデューサー)と、ナミビアの砂漠に半年耐えたスタッフの皆さん、素晴らしい映像をありがとう。映画は編集室で練り直されて完成されます。シドニーにいる同僚のみんな、ポストプロダクションの関係者……彼らは手と頭を使い、愛をもって仕事をしているのです。ありがとう」(シクセルによるアカデミー賞でのスピーチ)

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 ウォー・タンクをはじめとした乗り物の数々、またイモータン・ジョーの砦シタデルなど、作品の世界観を見事に具現化してみせたコリン・ギブソン(美術)とリサ・トンプソン(装置)が美術賞を受賞した。2人はともに初ノミネート、初受賞だ。

 ギブソンは「私は周囲の支えなしでは何もできません。このような賞を頂くためには、大勢の支えが必要でした。監督の下に各国のスタッフが集まり、心を病んだ男、片腕を失った女、脱走した5人の妻たちの世界を描きました。多種多様な人々を初めて称えたオスカーです」と、今回の受賞式に対する「多様性に乏しい」との批判をスピーチで皮肉った。

 メイク・ヘアスタイリング部門を受賞したレスリー・ヴァンダーヴォルト、エルカ・ウォーデガ、ダミアン・マーティンは全員初ノミネート、初受賞。「素晴らしいビジョンを実現する旅に私たちを導いてくれてありがとう」とミラーに感謝を述べた。ヴァンダーウォルトは70年代からヘア&メイクアップ・アーティストとして活躍し、「マッドマックス2」「ムーラン・ルージュ」「華麗なるギャツビー」など、幅広い作品を手がけてきたベテランだ。

 音響編集賞のマーク・マンジーニは4度目のノミネートで初受賞、デイヴィッド・ホワイトは初ノミネート、初受賞を果たした。腕を振り上げてガッツポーズをしながら壇上に上がった2人は開口一番、「マッドマックスのファン、やったぞ!総なめだ!」と快哉を叫んだ。「何千年もの間、人は暗闇の中、かがり火や映写機の光の下で物語を語り継いできました。デイヴと私は音で語ります。ジョージ・ミラーは『マッドマックスは耳で観る映画だ』と言いました。この作品ほど音で語る映画は他にない。音響家は語り手です。ありがとうジョージ、また次に会おう」と挨拶したマンジーニは、1970年代から120を超える作品の音を操ってきたサウンド・デザイナーだ。「レイダース 失われた聖櫃」「ロボコップ2」などのアクションから、「アラジン」「美女と野獣」といったアニメーション映画まで、その活躍の幅は非常に広い。

 かたやホワイトは2000年代にデビューし、ドキュメンタリー作品やショートムービーなどを主に手がけてきた。長編のビッグ・バジェット・ムービーに携わるのは本作が初めて。「このめちゃめちゃうるさい映画で彼と仕事ができて最高だ!」とマンジーニを称え、「オーストラリアの仲間を代表して受賞するよ!イエア!ジョージ最高!」と喜びをストレートに爆発させていた。

 かすかな息づかいから爆発音まで、あらゆる音を正確に操る芸術、録音。2時間の尺にミラーのビジョンを余さず詰め込むために、アクションシーンはほぼコマ落としで撮影されている。そのため、多くの音声は後日、別録りされていたという。

録音賞が贈られたのは、クリス・ジェンキンス、グレッグ・ラドロフ、ベン・オズモの3人。ジェンキンスは5度のノミネートと3度の受賞、ラドロフは7度のノミネートと3度の受賞歴を誇る録音界の重鎮だ。もっとも、若手のオズモは初ノミネート、初受賞。

 ジェンキンスは「こんな作品への支持をありがとうございます。そうそうたる作品と共にノミネートされ、とても光栄です」と静かに語った。

衣装デザインを担当したジェニー・ビーヴァンは10回目のノミネートで2度目の受賞というオスカーの常連。俳優陣は言うまでもなく、撮影スタッフもドレスアップして臨むオスカーナイトだが、ビーヴァンは背中にドクロをあしらった革のジャケットにブラックデニム、黒のブーツという出で立ちで堂々とプレゼンターのケイト・ブランシェットからオスカー像を受け取った。

 メイクもせず、髪も洗いっぱなし。オスカーナイトの常識をことごとく無視したビーヴァンの立ち居振る舞いに一部の出席者は鼻白んだようだ。壇上へと向かう道中、通路脇に座っていたアレハンドロ・G・イニャリトゥらは拍手もせず憮然とした表情で彼女の背中を一瞥しただけだった。

 しかし、そんな一部の人の冷笑など意にも介さず、オスカーを手にしたビーヴァンは「最高の日だわ」と相好を崩した。「ナミビアの砂漠での長いロケ。最高のスタッフに恵まれました。とにかくアメイジングな体験でした。そして最後に真面目なことを言わせてちょうだい。ずっと考えてきたことよ。『マッドマックス』は予言になり得るかも知れない。お互いを思いやって環境破壊を止めなければ、この映画みたいな世界になってしまう」。

 そんな考えさせる一言を残し、ビーヴァンは颯爽と舞台袖へと消えていった。

 監督賞、作品賞は逃してしまう結果となったが、これほどのスタッフを集め、それぞれの力量を存分に発揮させる舞台を用意したジョージ・ミラーの手腕には舌を巻くばかりだ。続編の制作予定はないと断言してはいるが、この2賞を勝ち取るまで走り続けてほしい。

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