PR

NHK常時同時配信 ネット費膨張、民放が懸念

PR

その他の写真を見る(1/2枚)

 今年度中に開始を予定しているテレビ番組のインターネット常時同時配信実現に向け、NHKが着々と準備を進めている。10日には、ネット業務の実施基準改定素案を公表。素案では、ネット活用業務費の上限について、従来の「受信料の2・5%」を維持したが、公益性の高い業務は別枠として管理し、実質的に2・5%を超える見込みとなった。費用はさらに膨らむことが予想され、NHKの肥大化を恐れる民放との駆け引きが激化する可能性がある。(森本昌彦、石井那納子)

■年間50億円試算

 「既存業務を相当、畳めるものは畳んでいくという努力をしないと(2・5%の枠に)入らない」

 ネット実施基準の改定素案を公表した10日、NHK幹部はこう話した。

 常時同時配信の年間運営費は約50億円という試算がある。これには権利処理にかかる費用などは含まれない。採算性が未知の事業にそれだけのコストをかけることに民放が二の足を踏むのは当然で、利益追求が最重要課題ではない公共放送だからこそ可能な事業ともいえる。

 常時同時配信開始後、受信契約者はID登録をすれば(1つのIDで契約者と家族が利用可能)、スマートフォンやパソコンで、NHKの番組をリアルタイムに見ることができる。さらに見逃した番組も一定期間視聴でき、利便性が上がることは間違いない。

 とはいえ、巨額の受信料収入に支えられたNHKが無制限に資金を投入すれば、民放のネットビジネスを脅かす恐れがある。NHKの肥大化を阻止する防波堤の一つが、「2・5%」という上限だった。

■実質は別枠設定

 だが、2・5%は名目上の数字となったに等しい。

 素案では、常時同時配信を含むネット活用業務費について2・5%を上限としたが、これまでネット活用業務費に含まれていた国際放送のネット提供など4業務を別枠とし、個別に上限(計90億円)を設けることとした。

 こうした別枠を設けた上で、ネット活用業務費は今後、さらに膨らむ可能性もある。

 NHK経営委員会の石原進委員長は10日、「ネットがこれから、さらに伸びるという予測がある。そのときどうするのかという問題がある」と話し、将来の費用の増加をにおわせた。素案の付則には、実施基準を令和5年度末までに見直すことが記された。常時同時配信の利用が広がればコストも増え、2・5%内に収めることは困難となる。

■問われる公共性

 NHKの素案を専門家はどうみたのか。

 上智大学の音好宏(よしひろ)教授(メディア論)は「上限が維持された背景には、NHKの悲願だった常時同時配信をスムーズにスタートさせるため、民業圧迫を指摘する声などへ配慮せざるを得なかったという事情が透ける」と指摘。2・5%枠の今後については、「新たなサービスに視聴者がどれだけ満足し、支持を集められるかで変わってくるだろう。視聴者の納得と支持を獲得し、世論形成されていくことで、将来的にさらにサービスが拡大していく可能性もある」と話す。

 一方、立教大の服部孝章名誉教授(メディア法)は「常時同時配信を行いたいというNHKの危機感は理解できるが、今後どのような展望を持っているのか示されていない。受信料を日々の放送、通信にどのように使っていくのかについて、ビジョンや金額を明らかにし、丁寧に説明することが必要だ」と語る。

 NHKの動向に敏感にならざるを得ない日本民間放送連盟(民放連)の永原伸専務理事は11日、「(民放連が意見書で求めていた)基本業務の見直しや受信料制度についてはいまだ手つかずだ」と報道陣に話した。常時同時配信実施で「公共放送」から「公共メディア」を目指すNHKだが、今後は組織としての公共性をより問われることになりそうだ。

この記事を共有する

おすすめ情報