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豪快な重低音 日本最大の三味線が42年ぶりに復活
更新長さ1・7メートル、重さ約30キロという日本最大の三味線「豪絃」が42年ぶりに蘇り、12月、都内で披露された。明治生まれの長唄三味線奏者、四世杵屋佐吉(1884~1945年)が開発した巨大三味線を、孫の七代目佐吉さん(64)が10年がかりで生まれ変わらせた。(飯塚友子)
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12月13日、東京・内幸町ホールで催された「長唄左門会定期演奏会」。七代目が巨大な豪絃にコントラバス用の弓を当てると、三味線とは思えない重低音が会場に鳴り響いた。
「今日は祖父、四世の命日。祖父が残した楽器を、きちんとした形で弾きたかった」と感無量の様子だ。
歌舞伎舞踊の「黒塚」など数々の名曲を生んだ四世は、三味線の改良にも情熱を燃やし、低音が出せる「セロ三味線」や「豪絃」を開発。昭和6年にはエレキ三味線「咸弦」まで生み出した。
四世が亡くなった後、豪絃は長く演奏されることもなかった。「あまりに棹が長過ぎて指が届かず、演奏しにくかった」と七代目。
豪絃の現状を憂えた七代目は10年前から復元に着手。演奏しやすいように棹を15センチ縮め、立てて演奏するための脚を付けた。さらに今回、42年ぶりに胴の皮を張り替えた。
七代目の思いに応えたのが、東京・世田谷で三味線・箏専門店「亀屋邦楽器」を営む芝崎勇二さん(79)と勇生さん(49)親子だ。
「胴の大きさが普通の三味線の倍以上なので、猫ではなく犬皮が張られていました。今回はカンガルー皮を使いました」と勇生さん。さまざまな工夫が必要だったが、芝崎さん親子は「難しい仕事で、かえってやる気になりました」と笑う。
11月末、豪絃はついによみがえった。七代目は「祖父の苦心作を演奏できてうれしい。ゆくゆくは豪絃のための曲も作りたい」と満足そうな表情を見せた。