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一青窈「ハナミズキ」 他者の幸せ、祈りが昇華 きっかけは9.11

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一青窈「ハナミズキ」 他者の幸せ、祈りが昇華 きっかけは9.11

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 歌手で作詞家の一青窈(ひとと・よう)(38)が、代表曲「ハナミズキ」(平成16年発売)を初めてセルフカバーした。この曲は、大手カラオケメーカーの年間チャートで11年連続トップ10入り。実力派ミュージシャンたちにもカバーされている。この曲が愛され続ける理由は-。(竹中文)

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 「『ハナミズキ』はメロディーラインの美しさに加え、歌詞が分かりやすく、核心をついている。ありきたりではない表現まで昇華できた曲だとも思います」

 「ハナミズキ」が人気を集める理由を一青は、こう分析する。原曲の発売から11年という長い年月が経過した。それでも「唯一、変わらないように歌っているのが『ハナミズキ』。自分を原点に戻してくれる曲で、純粋な気持ちで歌い続けられます」。言葉を選びながら落ち着いた声で語る。その慎重な姿勢からは、自身が発する言葉に対する責任感と誠意が感じられる。

 「ハナミズキ」は、13(2001)年に米中枢同時テロが発生したとき、現地に住む男性の友人と彼の恋人の幸せを願い、作詞した。この友人は、一青が慶応大学環境情報学部に在籍中、同じアカペラサークルに所属していた。

 「友人が巻き込まれた米中枢同時テロは身近な戦いだ、と感じられました。(世界貿易センタービルのタワーが崩壊していく)衝撃的な映像を見て約20分で歌詞を書きました」。きっかけは「友人と友人の好きな人の幸せを願う気持ち」だったが、「自分以外の他者の幸せを祈る気持ちが連鎖していけば、憎悪による“戦争の鎖”が断ちきれるのでは、と思って書き上げました」。

 今年は米国から日本への「ハナミズキ寄贈100周年」。この機にカバー曲の制作を決めた。この曲に込められた他者の幸せを願う気持ちは「母の子供に対する無償の愛の目線に似ている」とも指摘する。自身は「ラジオで音楽を聴きながら料理を作ってくれた母から『無償の愛』を感じて育ちました。歌謡曲を好きになったのは母のおかげ」とほほ笑む。その母は、一青が高校生のときに他界。台湾人の父も一青が小学生のときに死去した。一青は今秋、出産予定で、もうすぐ母になる。

 7月29日発売のカバーアルバム「ヒトトウタ」(ユニバーサル)には一青の母校、森村学園(横浜市)の合唱部の生徒たちと歌った「ハナミズキ」を入れた。このほか、母が愛した歌手でもある中島みゆき(63)の「糸」や、父が死去したときによく聴いた歌手、玉置浩二(56)の「ロマン」のカバー曲など10曲を収録。「人の想いにまつわる名曲」をテーマに選曲したという。ボーナストラックとして中国語で歌う「四照花(ハナミズキ Chinese Ver.)」も収めた。

 「『ハナミズキ』の歌詞には自分の死生観や父母に対する思いも詰まっています。父の祖国の人たちなど多くの方に届けたいと思っています」

 他者の幸せを祈るという普遍的なテーマは今も国境を越え、多くの聴衆の胸を打つ。