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「ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団」3月来日 ダンサー・瀬山亜津咲 魅力を語る

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「ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団」3月来日 ダンサー・瀬山亜津咲 魅力を語る

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 ■人が輝く瞬間 私たちの舞台で

 世界的に活躍する独ヴッパタール市の名門「ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団」が、3月20日から始まる来日公演で代表作の一つ「コンタクトホーフ」を、彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市)で上演する。現代屈指の振付家だったピナの死から5年。同舞踊団で14年のキャリアを持つ日本人ダンサー、瀬山亜津咲(あづさ)が、ピナとその作品の魅力を語った。(飯塚友子)

 ダンスに演劇的手法を取り入れた「タンツテアター(舞踊演劇)」を確立し、世界文化賞も受賞したピナ・バウシュ。ふれあいの館を意味する「コンタクトホーフ」は1978年初演のピナ初期の傑作として知られる。講堂のような広場に正装した男女が集い、自分の名や住所を告げ、恋愛や人生観を語ると、集団見合いのように近づき、すれ違う。そこに愛やいさかいも生まれる。

 群馬県出身の瀬山は、入団直後の2001年、この作品に出演。「出演者全員、オーディションのように舞台に並び、自己紹介をする。隠さず、真の自分でいることが求められる独特な空間で、異様な緊張感に手足が震えました」

 昭和61(1986)年の同舞踊団初来日公演でも上演された。ピナは2000年、ヴッパタールの65歳以上の市民による“熟年版”を上演し、老いや死をとらえることに成功する。さらに08年には14~18歳の“若者版”も企画。同作品の振り付けが、演者によって全く別の意味を持ち得ることを鮮やかに示した。

 舞台経験のない若者が出演し、戸惑いながら自分をさらけ出す過程を追ったドキュメンタリー映画「ピナ・バウシュ 夢の教室」(10年)は、日本でも反響を呼んだ。

 「年代を超え成立する、ピナらしい社会の縮図のような舞台です。若者なら初々しさ、熟年の方なら昔を懐かしむふれ合いがある。私たちの舞台なら、国籍や年代、体の大きさも違う団員が、毎日違う気持ちで周囲との距離感や間合いをはかっています」

 ピナのタンツテアターは独特で、「人がどう動くかではなく、何が人を動かすのか」を追究した。「愛とは何か」などという100にも及ぶ問いかけに、素のダンサーが言葉や動きで応じ、それらが作品の素材となった。

 「何をしてもいい稽古場は楽しかった。彼女の、人が輝く瞬間を見極める目は素晴らしかった。内面からほとばしる感情を、体で表すのがダンス、と私たちを通して伝えた」と瀬山。

 舞踊技術より、個人の経験そのものを重視したピナ。瀬山は昨年8月、演出家の蜷川幸雄率いる高齢者劇団「さいたまゴールド・シアター」に、ピナの手法でダンス作品を振り付けた。

 「テーマに沿って、彼らが磨かれていくのを目の当たりにし、私自身が学んだ」。ピナ亡き今、改めて偉大さを感じたという。今公演では、ダンサーとして出演する。3月23日まで。問い合わせは同劇場(電)0570・064・939。

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【プロフィル】Pina Bausch

 ピナ・バウシュ 1940~2009年。ドイツの振付家。ゾーリンゲン出身。1973年、ヴッパタール・バレエ団芸術監督となり、ヴッパタール舞踊団と改称。代表作に「春の祭典」「カフェ・ミュラー」「コンタクトホーフ」など。

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