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米就労ビザ発給停止に日本企業困惑

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 トランプ米大統領が、米国人の雇用確保を目的に一部の就労ビザ(査証)の発給を年内は停止する方針を打ち出したことに対し、日本企業に困惑が広がっている。新型コロナウイルス感染拡大に伴う入国制限で、「既に米国関連での人事異動で混乱が起きている中、泣きっ面に蜂だ」(メーカー幹部)と嘆きの声が上がっており、経団連の中西宏明会長も「事務上、大変困る」と強い懸念を示した。

 中西氏が会長を務める日立製作所では、米国駐在社員のうち約20人のビザの期限が近く切れるため、帰国を考えなくてはならない状況だ。トランプ政権のビザ発給停止の方針で後任の駐在員を送ることもできず、人事異動に支障を来す可能性がある。

 キヤノンは、ビザ発給停止の可能性があると事前に予想して交代要員の駐在員数人を早めに米国に渡航させたため、「直近の影響は回避できている」(広報部)。ただ、ニューヨークの販売会社に100人以上の日本人が在籍する中、ビザの発給停止が長引けば、要員不足の問題が起きかねないと不安は残る。

 ニュージャージー州など複数の米国拠点を持つ日本郵船の広報担当者は、「日本人駐在員のビザ延長が認められなければ日本に戻さざるを得ない」と説明する。その上で、「管理職の日本人が不在になる場合、現地スタッフだけでカバーしきれないだろう」と心配する。あるメーカーは、再入国拒否を懸念し、米国駐在社員が米国を出国しないように指示する方針だ。

 米国でスポーツ用多目的車(SUV)向け大口径タイヤが人気で、現地に多くの拠点を持つTOYOTIRE(トーヨータイヤ)は、現地駐在員に、今回の発給停止の対象外であるビザを取得させており、「今後、発給停止の対象範囲が拡大すれば駐在員の派遣に影響が出る可能性がある」としている。

 各社は、発給停止の条件や例外適用などの可能性も含め、「情報収集を進めている」(三井物産)状況だが、同時に日本政府を通じ、米政府に改善も求めている。

 6月下旬、経団連副会長らは西村康稔経済再生担当相との懇談で、米国の就労ビザ停止問題の解決について日本政府が積極的に取り組んでほしいと求めた。

 今回のビザ発給停止は、トランプ氏が大統領選をにらんで米国人の雇用を確保するのが狙いとされる。日本の経済界としては、米進出企業の活動を停滞させることにつながり、結果的には、米国経済を悪化させるとして改善を強く求める考えだ。

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