PR

【ビジネス解読】インド初の新幹線計画に暗雲 地元反対やコストで日本勢が「及び腰」 

PR

インドが建設を計画している高速鉄道のムンバイ駅の完成予想図。日本の新幹線方式が採用されている(JICA提供)
インドが建設を計画している高速鉄道のムンバイ駅の完成予想図。日本の新幹線方式が採用されている(JICA提供)

 インド初の高速鉄道計画に採用が決まっている日本の新幹線方式の事業化に、暗雲が立ちこめている。反対運動で土地収用が難航。車両システムの受注が有力視される日立製作所や川崎重工業は、インドが現地生産にこだわる中、採算性を危ぶむ。こうした状況に、傘下の日本コンサルタンツ(JIC)が設計支援などで協力するJR東日本は「及び腰」になっており、官邸主導のインフラ輸出は戦略の見直しを迫られている。

地元が反対

 「おおむね5割程度と聞いている」。JR東の担当者は、インド側が進める用地取得状況をこう語り、開通時期についても「確定した目標はない」と歯切れが悪い。

 同計画では、インド西部の最大商業都市ムンバイとアーメダバード間の約505キロメートルを、在来線特急の3分の1となる約2時間で結ぶ。東京~新大阪間の約552キロより少し短い距離だ。

 平成27年12月の安倍晋三首相とモディ首相の首脳会談で、新幹線方式の導入で合意した。総事業費は9800億ルピー(約1兆8000億円)で、令和5年の完成を目指している。

 当初は、仏企業が鉄道メーカーのアルストムの受注を念頭に事業化調査したが、高速鉄道の巨大市場を狙って日本が官民一体のトップセールスに出て逆転受注した。中国覇権を牽制(けんせい)したい日印両国首脳の思惑が一致した格好だ。

 だが現地では、建設予定地のグジャラート州の地元住民らが、政府による土地収用の中止を求める申し立てを裁判所に行うなど反発が続く。

 それでも、年明けには20から構成される入札パッケージのうち、車両の入札申請が始まる予定だ。日本側は、日本企業の受注を条件に、事業費の約8割を0・1%という好条件の円借款で低利融資する万全の支援体制を敷いた。

 車両は、JR東日本の東北新幹線「はやぶさ」に使われている「E5系」の導入が予定されており、受注先としてE5系の開発を担当した川崎重工業と日立製作所の名前があがる。

 川重の兵庫工場(神戸市)の新幹線車両製造現場には平成28年11月、モディ首相が視察に訪れている。川重は29年6月、インドの大手重電メーカー、バーラト・ヘビー・エレクトリカルズ(BHEL)と高速鉄道車両の製造に関する協業で合意。高速鉄道車両の共同受注を目指す。

 川重の幹部は「ゴーサインが出ればいつでも動ける状況にある」と強調する一方で、「きちんと利益が上がらなければやる意味はない」とも述べた。参入にあたっては、インド高速鉄道の採算性を十分に精査する考えを示す。「安全保障分野も含めた日本とインドの関係強化のため」といった理由だけでは手を出せないというのが本音だ。

欧州は競争力

 日本側は、当初は車両を輸出して1路線で採算性を見極め、他路線の追加受注が決まった段階で現地生産を検討する算段だった。だが、インド側が他の約10の高速鉄道路線の市場も念頭にメイク・イン・インディア(インドで作ろう)の経済政策を掲げ、インドでの現地生産を要求。車両建設に対する双方の認識の差が露呈している。

 日本の新幹線の生産体制も、事業計画の停滞につながっている。JRが車両や電気、通信のシステム、軌道までをパッケージで設計・開発し、メーカーに車両、電気、信号など必要な仕様を個別に発注する。すなわち、JRを頂点とした生産体制が特長だ。今回の計画では、車両や部品メーカー各社がそれぞれ個別にリスクを勘案した結果、コストが積み上がり、「身動きがとれない状態」(関係者)に陥っているという。

 その点、欧州は車両、電気とそれぞれが競って納入する仕組みで競争原理も働き、コスト競争力もある。

 司令塔となるべきJR東はインドの高速鉄道計画について、「当社の成長に向けた新たな事業領域への挑戦」と位置付ける。社員の海外経験を通じ、自社の「内向き体質の克服」や「社員の意欲向上につながる」と期待を寄せる。

 ただ、現地への駐在員派遣時期やその規模は、「インド高速鉄道公社(NHSRCL)と協議中だ」と述べるにとどめている。(経済本部 上原すみ子、桑原雄尚、岡田美月)

この記事を共有する

関連トピックス

おすすめ情報