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米中貿易摩擦、着地点見えぬまま2割縮小 バトル1年、世界に影

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 米国と中国が互いの製品に追加関税をかけ合う貿易摩擦に突入してから6日で1年がたった。米中間の貿易額は減少し、この影響で中国の経済成長は鈍化。米国も農業など一部産業が打撃を受けている。米国による「第4弾」の追加関税は6月下旬の米中首脳会談で即時発動が見送られたが、再開される貿易協議の着地点はいまだ見えず、日本を含む世界経済は依然として下振れのリスクに直面している。(山口暢彦)

■中国にダメージ、成長目標下げ

 米商務省が今月3日に発表した5月のモノの貿易収支によると、中国に対する貿易赤字は301億9500万ドル(約3兆3千億円)で、4月の269億300万ドルから12%拡大した。5月10日に米国が「第3弾」として中国製品2千億ドル分の関税を引き上げることなどを見越し、「駆け込み輸入」が増えたとみられる。

 米中貿易そのものは縮小しており、米国の対中輸出入額を合計した毎月の貿易額は今年に入り、前年同月比1~2割少ないペースで推移している。

 特に「このマイナスの影響が出ている」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員)のは中国経済だ。対米輸出の減少で生産などが鈍り、製造業は設備投資を抑えているという。中国政府は3月、今年の国内総生産(GDP)成長率目標を2年ぶりに引き下げ、「6・0~6・5%」とした。

 中国から企業の輸出拠点が流出し、米国から課される関税が低い国に移る動きも加速している。拠点を受け入れているベトナムの4~6月期の実質GDP成長率は前年同期比6・71%と、市場予想を上回る高水準だった。中国に取ってかわる形で対米輸出が増え追い風になったとみられる。

■米、アップルから農家まで影響

 一方、米国経済は「全体をみれば生産や雇用の落ち込みがなく、目立った悪影響は出ていない」(小林氏)。1~3月期の実質GDP確定値は年率換算で前期比3・1%増加し、特に設備投資が4・4%増と大きく伸びた。景気拡大期間は7月に丸10年を超え、過去最長を更新する公算が大きい。

 ただ、米アップルは1月、米中摩擦による中国の消費者心理の悪化でスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の販売が不振だったとして、2018年10~12月期の売上高見通しを下方修正し、年初の世界的な株価急落を招いた。

 製造業の景況感を示す、米サプライ管理協会(ISM)発表の先月の製造業景況指数は51・7で、16年10月以来の低水準だった。

 中国の報復関税で大豆などの農家も打撃を受けており、今年5月、トランプ米政権は160億ドル規模の農業支援策を発表。追加関税の対象となった製品の値上がりも始まり、家計が圧迫されている。 

■日本は「輸出や生産に弱さ」

 日本の場合は、4月の対中輸出が2カ月連続の前年割れとなった。半導体関連が落ち込んだ。政府は月例経済報告で景気が「緩やかに回復している」とするが、中国の減速などで「輸出や生産の弱さが続いている」と分析している。

 トランプ大統領は残るほぼ全ての中国製品に追加関税を課す「第4弾」を、中国の習近平国家主席との会談を踏まえ先送りした。ただ、巨額の対中貿易赤字や知的財産権の侵害を問題視している状況に変わりはない。トランプ氏は来年の米大統領選での再選を目指しており、強硬姿勢が続く可能性は高い。

 米中の貿易摩擦はハイテク分野をめぐる覇権争いの様相も呈しており、国際通貨基金(IMF)によると、世界のGDPは0・5%下押しされる恐れがある。

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