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【経済インサイド】親日国バングラデシュに熱視線 米中貿易摩擦も追い風

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ダッカ近郊のSEZ開発用地を視察する住友商事の関係者(同社提供)
ダッカ近郊のSEZ開発用地を視察する住友商事の関係者(同社提供)

 官民が南西アジアのバングラデシュに熱い視線を送っている。年率7%増の経済成長が続き、人口約1億6000万人の消費市場と輸出拠点としての魅力も高まる。米中貿易摩擦の長期化で、生産拠点を中国からアジアなどに移管する動きも再評価につながり、住友商事は5月にダッカ近郊の経済特別区(SEZ)開発で同国の政府機関と合意した。周辺の安全保障を重視する政府も二国間関係を強化。安倍晋三首相は5月末のハシナ首相との首脳会談で多額の円借款供与で合意しており、インフラ整備に関する商機も拡大している。

〝脱中国〟の動きも

 5月26日、ハシナ首相が来日する直前の絶好のタイミングで、ダッカ市内で住友商事とバングラデシュ経済特区庁(ベザ)が、工業団地を含むSEZ開発の運営会社の設立で合意した。同国の産業多角化や雇用創出につながる案件だけに、国際協力機構(JICA)がベザ側の出資を円借款で支援する官民連携事業だ。

 同事業が検討されたのは、5年前にさかのぼるだけに、関係者の感慨は深い。14年5月に来日したハシナ首相は、日本企業向け工業団地を整備する考えを示し、日本企業の進出を呼びかけた。当時は人件費が高騰する中国からアジアへの生産シフトの動き、「チャイナ・プラス・ワン」の候補地として注目され、将来の消費市場をにらみ、一気に具体化するかにもみえた。

 ところが、16年の日本人も犠牲になったダッカ飲食店テロ事件の影響で、現地の治安への警戒感も増した。ただ、事件後も日本企業の進出意欲は衰えず、その間、JICAは、発電所やアクセス道路整備など周辺インフラ整備への円借款供与を決め、プロジェクトを地道に支えた。

 昨年12月の総選挙でハシナ首相が再選され、政治的にも安定したことで大きく前進した。

 バングラは比較的労働コストが安く、若い労働人口も多い。日本政府関係者は「現地では、米中摩擦の長期化を予想し、中国からの生産移管の動きが増えている」と話す。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、18年時点の進出日本企業数は260社で、09年に比べ3.7倍に増えた。中でもホンダは二輪車販売が好調で、昨年11月、現地法人が二輪車の新工場を稼働し、順次増産する計画だ。ロート製薬もリップクリームや洗顔用品が人気で、YKKグループも研究開発拠点の新設を検討している。

 バングラは親日国で、日本製品への信頼が高いが、インフラの未整備や工業団地不足が進出のネックだった。住友商事は工業団地の整備で安全面確保に加え、輸出入手続きや会社登記などのワンストップサービスの提供で日系企業の進出を後押しする。

 人口構成が若いだけに、バングラ政府にとって、若者の雇用創出は最大の課題で、今後約100カ所の工業団地を整備し、1000万人の雇用創出を目指したい考えだ。バングラは早ければ24年にも後発開発途上国(LDC)から完全卒業する見通しで、主力の繊維事業の一本足打法から脱却し、産業多角化をてこに先進国入りを目指す考えだ。

日本企業に商機あり

 日本政府にとっても、中東からのエネルギー輸送ルートの確保など、バングラ周辺の南西アジアの安全保障は重要課題だ。

 バングラは、巨大経済圏構想「一帯一路」を進める中国とこれに反発するインドの2大大国の間で微妙な外交のかじ取りを迫られており、日本への期待は大きい。

 日本政府は、中国のベンガル湾での港湾拡張などを牽制する意味合いもあり、港湾などインフラ整備による経済協力を強化している。

 5月29日の安倍首相とハシナ首相との首脳会談では、ベンガル湾周辺で進める商業港の建設など、インフラ整備へ計約1326億円の円借款供与を表明した。国別円借款の融資実績は、14年度以降は毎年、1000億円を上回る規模で、18年度は2003億円にのぼり、インドに次ぐ第2位という重点国だ。

 今後もダッカメトロ1号線や5号線など日本が技術優位を持つ鉄道などインフラ整備計画がめじろ押し。しかも、「競争入札にもかかわらず、技術への信頼から日本企業の受注率が8割と圧倒的で、日本企業の商機は大きい」と政府関係者は期待する。

 すでに住友商事などが、高効率石炭火力を受注したほか、同国初の都市鉄道のMRT6号線をめぐり、三菱商事と川崎重工業が鉄道車両や車両基地設備を、丸紅なども鉄道システムを一括受注している。

 とはいえ、手続きの煩雑さや税制優遇の還付がなかなか受けられないなど、進出日系企業の不満も少なくない。政府と東京商工会議所の日本・バングラデシュ経済委員会などは今年7月にも、「官民合同経済対話」をダッカで開催し、投資環境の改善にも取り組む方針で、バングラ側の投資誘致に向けた本気度も試されている。(経済本部 上原すみ子)

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