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WTO逆転敗訴 日本、楽観が暗転 上級委が1審手続きを問題視

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韓国の水産物禁輸めぐる日韓の主張と1審・2審の結論
韓国の水産物禁輸めぐる日韓の主張と1審・2審の結論
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 日本は水産物禁輸をめぐる韓国との争いで逆転敗訴した。日本の主張は昨年、1審の世界貿易機関(WTO)紛争処理小委員会(パネル)で認められており、最終審に当たる上級委員会でも勝てると楽観論が広がっていただけに、政府内には動揺も広がっている。今回の上級委の判断は政府の食品輸出の拡大戦略にも障害となりかねない。

 「なぜ禁輸を容認する決定となったのか。分析しないといけない」。日本の政府関係者は今回の判断を受けて、こう述べた。

 上級委が問題視したのは日本が勝訴した1審でのパネルの手続きだ。放射性物質による健康被害への懸念を背景にした韓国の禁輸措置が適切かどうかを判断するためには、年間の許容内部被(ひ)曝(ばく)放射線量、対象となる魚の生息海域、達成可能なより低い被曝水準の設定という3つの要素を考慮しなければならないが、パネルは許容内部被曝放射線量だけを基準に判断したという。

 上級委は「現実の数値のみならず、土壌など周辺環境も含め将来にわたって改善すべきだ」との韓国の主張を組み込まずに結論づけたと判断。「法律の適用上欠陥があり、(パネルの判断を)取り消す」とした。

 韓国がこうした主張を続けるのは、2008年に牛海綿状脳症(BSE)を理由とした米国産牛肉輸入制限解除の際に、大規模な抗議集会や街頭デモが実施されるなど、食の安全に敏感な国民感情への配慮も大きい。今回の問題をめぐっては、自国の主張の妥当性をアピールするため、汚染水処理や廃炉など原発の事故処理が続くことも訴えていた。

 WTOのお墨付きを得て、日本産食品の安全性を世界に訴える好機にしようとした政府にとっては想定外の判断で、他の輸入規制導入国に比べても特に厳しいとされる韓国の制限措置が容認されたことは痛手だ。

 日本は関係する地域で食品に放射性物質が含まれていないか検査し、基準値を超えた食品は流通しない仕組みを構築。こうした取り組みについてWTOも一定の評価をしたようだが、事実上の敗訴でイメージの悪化は避けられない。

 日本の食品輸出は拡大が続いており、今年は初の輸出額1兆円の達成を視野に入れる。今後、不安払拭に向け、より一層の丁寧な説明が求められそうだ。

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