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【アメリカを読む】ボーイング墜落で浮かぶ米当局と航空業界「近すぎる関係」

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米議会上院の航空宇宙小委員会の会場に入った連邦航空局のエルウェル長官代行(左)ら=3月27日、ワシントン(AP)
米議会上院の航空宇宙小委員会の会場に入った連邦航空局のエルウェル長官代行(左)ら=3月27日、ワシントン(AP)

 米航空機大手ボーイングの新型旅客機が半年で2機の墜落事故を起こし、「航空王国アメリカ」に対する信頼が揺らいでいる。2件の事故原因は調査中だが、新型機に導入された「MCAS」と呼ばれる失速防止装置が墜落を誘発した可能性が浮上している。ボーイングと米連邦航空局(FAA)は、機体の安全性や新型機の認可の過程に問題はないとしているが、「世界一」を自任する米航空当局と業界との緊密な関係にメスが入ろうとしている。(ワシントン 塩原永久)

 3月27日、米議会上院の航空宇宙小委員会で開かれた公聴会は、航空業界を監督するFAAと、ボーイングなど大手メーカーとの「近すぎる」関係がやり玉に挙がった。

 「米国は航空安全の『黄金律』だ。FAAはそれを守る決意だ」

 FAAのエルウェル長官代行はそう証言し、航空業界で米国が「世界標準」を握っているとの自負を強調した。エルウェル氏は、墜落したボーイング737MAXの機体性能と、認可したFAAの審査過程に問題はないとの認識もにじませた。

 だが、FAAを抱える運輸省のスコベル監察官は、真っ向から対立する意見を述べた。

 「明らかにFAAが黄金律であるとの信頼は揺らいだ」

 スコベル氏はそう述べると、FAAが737MAXを認可した過程を調査することを表明。2件の墜落の要因として指摘されているMCASについて、ボーイングが導入を決めた経緯やFAAによる承認の判断についても検証する意向を示した。

 公聴会で特に問題視されたのが、FAAの安全認証業務をメーカーが代行できる「ODA制度」だ。航空機材や搭載する装置に関する高度な専門知識を有するメーカーのうち、FAAが十分な安全管理体制を持つと認めた場合、メーカーの申請を受けて、FAAがODA制度の対象企業を認定する。

 新型機の認可を当局に申請するメーカー側が、当局に代わり自ら安全性を検証する仕組みといえるが、同小委員会のクルーズ議長(共和党)は「業界と当局の密接な関係が(安全管理)システムへの信頼を損なう恐れがある」と警鐘を鳴らした。

 エルウェル氏は、ODA制度が「60年以上、行われてきた」と述べ、実績に裏打ちされた仕組みだと強調。「FAAはODA制度の参加企業のすべてに極めて厳格な監督(態勢)を敷いている」として擁護した。

 また同氏は、ODA制度は欧州でも積極的に採り入れられており、同制度がないと仮定した場合、FAAは対応に1万人の増員と18億ドル(約2000億円)のコスト負担を要するとの試算を明らかにした。

 実はODA制度について、FAAを監視する立場である運輸省の監察官は、「リスク管理」の観点から問題視する姿勢を以前から示していた。スコベル氏は公聴会で、ODA制度のもとでのFAAの監督実績を検証した結果、「管理面での弱みが判明した」と指摘。2015年にFAAに改善を求める報告書をとりまとめたという。これを受けてFAAも、検査体制を大幅に見直す改革案を7月までに策定する方針だが、2件の墜落事故を機に、航空業界とFAAとの関係に向けられた疑念は容易に払拭できそうにない。

 一方、米メディアによると、昨年10月のライオン航空(インドネシア)の事故原因の暫定調査結果を受けて、MCASが操縦士の意図に反して誤作動し、墜落を誘発させた可能性が濃厚になった。エチオピア航空の場合も、MCASが墜落要因の背景にある疑いが浮上している。

 ロイター通信によると、MCASをめぐっては、ライオン航空の操縦士が墜落直前まで操縦ハンドブックを調べ、機首が異常に下がる要因を探ろうとしていたことがボイスレコーダーの記録から浮かび上がった。失速の恐れがあれば自動的に機首を下げるMCASの機能を含め、操縦士が扱いに習熟していなかった可能性がある。操縦士へのMCASの周知や、新型機向けの訓練が不足していたとの問題点が指摘されており、ボーイングに責任を問う声もある。

 FAAによる737MAX認証の経緯に関しては、運輸省監察官だけでなく、司法省や連邦捜査局(FBI)も捜査していると報じられている。捜査当局は操縦士の訓練マニュアルにも関心を寄せているという。今後は、墜落機の管轄国当局が進める事故原因の調査と並び、米国の関係機関がどこまでメーカーとFAAの関係に切り込むのかにも、関心が集まるだろう。

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