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【検証エコノミー】東証再編で「降格」「退場」も 選別基準見えず企業警戒

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東京証券取引所=東京都中央区
東京証券取引所=東京都中央区

 日本取引所グループ(JPX)傘下の東京証券取引所の市場構造改革をめぐる議論が近く本格化する。東証は3月、株式市場を4つから3つに再編する案を示した。最大の注目点は上場企業の選別だが、具体的な基準や実現時期は見えないままだ。「東証1部」に安住していた企業でも“降格”や“退場”になることが想定されるため、企業も投資家も警戒を強めている。

 東証4市場のうち「1部ブランド」は格別だ。自動的に東証株価指数(TOPIX)に組み入れられ、株価を維持しやすいほか、信用力が高まって銀行の融資を受けやすい。採用活動でも1部の看板が有利に働く。

 このため、多くの企業が1部上場を目指す。1部上場企業はこの30年間で倍増し、現在は2100社を超える。全上場企業の約6割がここに集中し、時価総額が20兆円を超す大企業から数十億円程度の企業まで混在している。

 「収益、時価総額、流動性、経営体制・ガバナンス(企業統治)、情報開示などが低水準な企業が多数含まれている」「TOPIXに連動する運用資産が増え、時価総額や流動性の低い株式の価格形成がゆがめられている」

 東証には機関投資家などから1部に対する不満が数多く寄せられている。1部ブランドが低下した理由は主に2つある。

 ひとつは上場基準が緩いマザーズ経由で1部に昇格する“近道”の存在だ。1部に直接上場するには時価総額250億円以上が必要だが、10億円以上で上場可能なマザーズからは40億円以上で1部に昇格できる。こうした企業の中には、投資家からの評価が高まらず、足元の時価総額が30億円前後にとどまっているケースもある。

 退出基準が緩いことも問題視されている。問題を起こしても直ちに上場廃止にならず、「特設注意市場銘柄」として改善に取り組む機会を与えられる。1部では現在、不正会計が発覚したアニメ制作会社も入っている。

 東証は昨年10月、市場構造の見直しに向けた検討に入った。背景には、世界の金融市場における東証の魅力低下がある。東証の上場企業時価総額は米国市場に続く2番手だが、中国市場の追い上げも激しく、市場改革は待ったなしの状況だ。

 東証が今年3月に示した案は、企業の成長段階や投資家層の違いによって、(1)海外を含めた幅広い投資家が着目する市場(2)一般的な投資家が参加する市場(3)高い成長可能性のある企業の市場-の3つに分けるというものだ。これまでに「時価総額250億円、500億円など一律の基準で選別する」「英文での情報開示」のほか、ガバナンスの強化を求める案も出ているが、東証の論点整理ではそこまで踏み込まなかった。

 「東証案の(1)の市場に所属できるかどうかが企業にとって死活問題になり得る」。大和総研の神尾篤史主任研究員はこう指摘する。神尾氏によると、数年後の1部昇格を目指す上場企業の中には、将来の降格リスクを避けるため、議論の行方と時価総額を見ながら、昇格のタイミングを計るところも出始めた。

 今後の議論に対する市場関係者の声はさまざまだ。大和証券グループ本社の中田誠司社長は「速やかに方向性を決めていただきたい」と注文。SMBC日興証券の清水喜彦社長は「どうしたら東京市場がより使いやすい市場になるか、世界の中でステータスを保てるのかという議論でなければいけない」と指摘する。

 JPXの清田瞭(あきら)最高経営責任者(CEO)は「2022(令和4)年3月期までにできあがる形が望ましい」などと述べており、この3年間が勝負になりそうだ。神尾氏は「傍聴を可能にするなどオープンな形で議論を進め、国民の合意形成を図ることが重要だ」と話している。(米沢文)

     

 日本取引所グループ(JPX) 東京証券取引所グループと大阪証券取引所(現大阪取引所)が経営統合し、平成25年1月に発足。このうち東証の株式市場は1部、2部、マザーズ、ジャスダックの4つに分かれている。1部には今年2月末時点で2130社が上場。JPXは東京商品取引所とも経営統合で合意しており、多様な金融商品を一元的に扱う「総合取引所」の実現を目指している。

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