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五輪前に羽田新ルート 住民不安払拭できるか

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 2020年東京五輪・パラリンピックの開催に向けた羽田空港(大田区)の国際線増便のため、国は経路を従来の東京湾上空から都心上空に変更する新たな飛行ルートの運用を目指している。五輪開幕前に新ルートの運用を始めたい考えで、2月までに5段階に分けて住民説明会を実施した。しかし、騒音や落下物を懸念するルート直下の住民の不安は解消されておらず、“軟着陸”へのハードルはまだ高そうだ。(松崎翼)

 羽田空港の発着は現在、騒音被害軽減のため、南風時は東京湾上空を旋回して滑走路に向かい、北風時に北向きに離陸する場合も、都心を迂回(うかい)して飛行している。東京湾上空の限られた範囲を飛ぶため、各飛行ルートの距離が近いことが増便できない要因となっている。これを都内の住宅街上空を飛行できるようにすることで、発着回数を年間44万7000回から最大3万9000回増やすのが新ルートの狙いだ。

 新ルートでは、南風時の着陸の際、埼玉県川口市周辺の上空約1350メートルを通過して、高度を下げながら豊島区や港区などを通って滑走路に向かう案や、北風時に離陸する際に江東区や江戸川区の上空を通過する経路などが示されている。新ルートを運用することで、1時間の発着回数は現行より10回増えるという。

 新ルートの適用は、南風時が午後3時から午後7時、北風時は午前7時~午前11時と午後3時~午後7時。ほかの時間帯は現行ルートのままとなる。

 都など関係自治体は新ルート案におおむね理解を示す一方、ルート直下の住民への説明を求めており、国交省は平成27年から3都県で住民説明会を段階的に実施。住民の要望を受け、当初案より飛行高度を引き上げるなど騒音軽減に配慮した案を示している。

 国交省は今後について「引き続き騒音、落下物対策などに取り組み、幅広いご理解をいただいた上で必要な手続きを行い、五輪前に新飛行経路を運用できるよう準備を進めたい」(蝦名邦晴航空局長)としている。

 「酒を飲んで操縦する奴もいるから信頼できない」「騒音で健康被害が出たらどうするの」

 1月下旬、豊島区の南長崎第四区民集会室で行われた住民説明会。パネル展示を指さしながら落下物や騒音対策などを説明する国交省の職員に対し、住民からは厳しい声が飛ぶ。職員は「決めたルールはしっかりと順守します」と強調したが、住民からは不満が目立った。

 豊島区では、新ルートの運用で南風時の午後3時から午後7時に約2分に1機が上空を通過することになる。南風時の運用は年間で4割程度になる見込みだ。

 東京国際空港環境企画調整室の鈴木信昭室長は「外国人観光客が増加する中、羽田の国際線増便は不可欠。羽田は地方空港への便も多く、地方活性化にもつながる」とメリットを強調するが、思うように理解が広がっていないという。

 住民説明会の形式にも疑問の声が上がっている。国交省の説明会は、会場に設置されたパネルを参加者が自由に閲覧し、職員が住民の質問などに個別に対応する「オープンハウス型」。住民を会場に集めて職員が説明し、質疑応答を行う「教室型」とは異なる。

 担当者は「教室型だと声の大きい人ばかりが意見するようになってしまうが、オープンハウス型であれば、個人的に気になることを気軽に聞ける」と説明する。これに対し、同区の男性(68)は「職員の説明は丁寧で良かったが、住民がそれぞれの意見を共有するためにも、ほかの人の質問も聞ける教室型の説明会にすべきだ」と不満げだ。

 初めて説明会に参加した1歳と4歳の娘を育てる男性(35)は「東京五輪後の便数はどうなるのかも不透明で、子育ても不安になる」と話した。

 住民に根強い反発が残る一方、説明を続ける中で「騒音は嫌だが、経済のために増便するのは仕方ない」と一定の理解を示す人もいるという。鈴木室長は「引き続き住民の皆さんの理解を得られるよう、粘り強く説明していきたい」と話す。

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