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【10%への壁 消費増税まで1年】(中)車業界、雇用9万人減も…販売は30万台減、損失マイナス2兆円

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国内の自動車販売台数の推移
国内の自動車販売台数の推移

 「もう消えゆく業界なのかもしれない」。横浜市で2つのゲームセンターを経営する男性(47)は、あと1年に迫った消費税増税に危機感を募らせている。

 ゲームセンターはもともと「100円でワンプレー」のいわゆるワンコイン・ビジネス。店舗に置かれた業務用ゲーム機は構造上、1種類のコインしか受け付けない仕組みで、釣り銭もでない。「100円のゲームを110円に値上げできない。増税分は店で吸収するしかない」

 電子マネーを利用できる店舗も増えてはいる。だが、個人経営の店にとって設備投資は容易でない。

 日本アミューズメント産業協会の調査によると、平成18年度に約2万4千店あったゲームセンターは、28年度には1万4千店と、10年で半分近くに減った。

 経営環境は過酷さを増す。インターネット接続が必要なゲームが増えたことで通信費の負担がのしかかる。生き残りをかけ、「50円でワンプレー」「100円でツープレー」など値下げ競争も激化している。

 川崎市でゲームセンターを経営していた男性(46)は今年7月に店を閉めた。「消費税増税は店をたたむ一つのきっかけになる。先が見えないのはまだいい。行く末が見えてしまうのは、つらいものだよ」

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 増税が販売に最も影響するのが、自動車、住宅など高額な耐久財だ。価格が数百万円から数千万円する商品は、2%の増税で、場合によっては100万円以上の消費者負担が生まれる。

 「雑談の中で、来年10月に消費税率が上がり、車が値上がりすることをお客さまにお伝えしろ」。最近、堺市の大手自動車メーカーの男性販売店長(42)は営業担当者にこう指示した。

 26年4月の8%への増税時も営業担当者らは増税前に車を急いで買うよう客に働きかけた。増税直前の1~3月の販売台数は例年より2、3割増加。増税直後に販売が2割減ったのを補えた。来年10月の増税前にもできるだけ「駆け込み需要」を取り込みたい考えだ。

 自動車業界の危機感は強い。日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は今月20日の記者会見で、消費税率を10%へ引き上げた場合、年間販売台数は約30万台減り、マイナス約2兆円の経済効果、約9万人の雇用減につながるとの試算を示した。

 自工会によると、9年4月の5%への増税で、販売台数は8年度の729万台から9年度に628万台、10年度に587万台へ急落。26年4月の8%への増税では25年度569万台、26年度530万台、27年度494万台と落ち込んだ。

 「車は国民の生活・情報インフラだ。過度な税金は車を買い求めにくくする」。豊田氏は消費税増税に関してこう訴え、自動車税の抜本的引き下げなどを通じた税負担軽減を求めた。

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 内閣府によると、8%への増税直前の26年1~3月期に305兆8696億円だった個人消費は、直後の同4~6月期に291兆7655億円へ急減した。耐久財を中心に大きな駆け込み需要と反動減が生じ、景気回復の足かせになったという。

 政府は今年6月決定した経済財政運営の指針「骨太方針」に「税制・予算による十分な対策を具体的に検討する」と明記し、消費税増税による需要減対策を進める考えを表明した。

 自動車は購入価格の3%を払う自動車取得税を廃止し、燃費に応じ税率が0~3%に変わる新税を導入して、環境性能のいい車の購入コストを下げる。

 住宅は住宅ローン減税を拡充。税負担が10年間で最大500万円軽くなる現行制度について、減税額を消費税増税後に引き上げる案などを検討する。「減税が拡充されれば、住宅販売はそれほど落ちないのではないか」。東京都のマンション販売業者は期待する。

 このほか政府が検討しているのが、増税分の値引きを認める「消費税還元セール」の解禁だ。現在、法律で禁止されているが、年末の税制改正協議で与党と法改正を議論する。

 ただ、政府は8%への増税時にも住宅購入支援策をはじめ5兆円規模の対策を講じた。それでも需要減は防げなかった。今回は、どんな対策をどの程度の規模で打ち出せばいいのか。正解は見えないのが実情だ。

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