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【基準地価】地価のインバウンド効果、“第2ステージ”に突入 産業として確立へ

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地価のインバウンド効果、“第2ステージ”に突入 産業として確立へ

基準地価更新
大勢の観光客でにぎわう伏見稲荷大社前=15日、京都市伏見区(寺口純平撮影) 1/2枚

 国土交通省が19日発表した平成29年の基準地価は、京都の観光名所や大阪・ミナミの繁華街の上昇率が目立つなど、訪日外国人旅行者の急増による需要が地価を押し上げる傾向が鮮明となった。訪日客の旅行消費額は日本の主要産業に匹敵する規模にまで成長。投資家も人気エリアの商業ビルを「安定銘柄」に位置づけつつあり、訪日客効果は新たな段階を迎えている。

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 朱色の大鳥居が観光客を出迎える京都市伏見区の伏見稲荷大社。世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」で、日本の観光地として4年連続人気1位となった周辺は飲食店などの出店が相次ぐ。最寄り駅の一つ、京阪電気鉄道の伏見稲荷駅は乗降客数が25年度の263万人から28年度は442万人と7割近くも増加した。

 大鳥居に近い喫茶店の女性オーナーは、空き家だった実家を改装して営業を始めたが「ここまで外国人客が増えるなんて」と忙しく手を動かす。

 基準地価の商業地上昇率は、トップの伏見稲荷大社周辺のほか、京都が八坂神社のある東山区など5地点トップ10入り。住宅地も別荘需要が旺盛な北海道倶知安町が上昇率トップ、沖縄県那覇市の那覇新都心地区が同3、4位に入り、“観光銘柄”が席巻した。

 国交省の担当者は「訪日客の増加が街の繁華性を高めている」と分析する。

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 地価における訪日客効果は“第2ステージ”とも呼べる動きが出ている。

 大阪・道頓堀のマスコット「くいだおれ太郎」で知られる「中座くいだおれビル」。今春、野村不動産マスターファンド投資法人が取得した際、116億円という購入額が業界の話題をさらった。テナント賃料収入を加味した投資利回り3・8%は、東京都心の高級オフィス並みだ。

 物販や飲食店が入居する商業ビルは退店リスクを伴うため、オフィスより高利回りが求められる。同ビルも退店テナントが出たが、担当役員は「再開発で魅力を高められるポテンシャルがある」と意に介さない。急増する観光客を当て込んだ、引きも切らない出店需要が勝算の源泉にある。

 訪日客による昨年の旅行消費額は約3兆7500億円で、電子部品や自動車部品の輸出額を上回る。「観光関連産業は今や製造業などと肩を並べるつつある」と観光庁関係者。産業としての地位向上が投資物件の格付けを高めている。

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 一方で、観光需要が地価上昇を牽引(けんいん)する構図は、危うさも持ち合わせる。

 今回の基準地価では、地方都市へ地価上昇の動きが広がる一方、これまで牽引役だった東京都心部の上昇率には鈍化傾向が表れた。不動産サービス大手ジョーンズラングラサール(JLL)の大東雄人アソシエイトダイレクターは「オフィス賃料の下落見通しを背景に、一部の海外投資家が資金引き上げの動きを見せている」と指摘する。

 地価における訪日客需要への傾倒は、こうした“天井感”の裏返しともいえ、投資家から高利回りを求められる振興リートも地方のホテル投資に意欲を示す。

 ただ、観光地でも久米島(沖縄県)や湯河原温泉周辺(神奈川県)、鳴子温泉周辺(宮城県)は下落するなど二極化の兆しもある。ラサール不動産投資顧問の高野靖央チーフストラテジストは「利回りの良さを求めて地方に出る投資が多い中、市況はピークへ近づいている。今後は物件ごとの選別が強まるだろう」と警鐘を鳴らしている。

(佐久間修志、織田淳嗣)

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