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【新聞に喝!】五輪より「コロナ後」政策に注視を ブロガー・投資家 山本一郎

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五輪マークのモニュメント。奥は国立競技場=2020年9月、東京都新宿区(川口良介撮影)
五輪マークのモニュメント。奥は国立競技場=2020年9月、東京都新宿区(川口良介撮影)

 新型コロナウイルスワクチン接種のスピードが上がり、政府、都道府県、自治体および医療関係者の多大な努力の成果が実を結びつつあります。他方、菅義偉(すがよしひで)政権が公約している東京五輪・パラリンピックの開催は世界的に「それは本当に必要なことなのか」という声が高まってきています。産経新聞でも、海外報道をベースに「日本に東京五輪中止促す 米有力紙、IOC批判」(「産経ニュース」6日)と報じ、コロナ感染拡大による緊急事態宣言の延長と、それに伴う経済低迷に苦しむ国民をよそに大規模なスポーツ大会をやり、その選手に無償提供のワクチン接種が行われることについて、日本国民の理解が得られるものなのか、悩ましく感じさせる読後感となっています。

 もちろん、五輪をやるからにはホスト国・都市としてしっかり開催するという責任感を持って進めていくのは当然としても、世界中がコロナ対策で奔走し、先進国だけでなく発展途上国においても無理なくワクチンが行き届くにはどうすればいいのか思案すべきタイミングで五輪をやることの意味、意義はどこにあるのかを考えなければならないでしょう。そうでなくても、昨年に五輪開催を延期した際の状況と比べても、現在のコロナ感染状況はより悪い、ということも考えなければなりません。

 ワクチンの接種が奏功し、日本社会が感染を克服できる期待感は高まっています。むしろ、いまは五輪開催を議論するよりも、脱コロナ後の日本経済の立て直しにどのような政策パッケージを用意し、荒廃した日本経済の再興を検討する方が喫緊の課題であることは言うまでもありません。材木や半導体など素材分野で実勢価格が急騰し、また世界的にコンテナ船の海運料金が前月比3倍になるなど、日本の輸入物価が上がっていく中で、飲食業・観光業に従事してきた国民は失職し、景気低迷でしわ寄せのいっている地方経済の壊滅的な状況は目を覆わんばかりです。

 メディアの役割は、目先の五輪開催の是非を報じることもさることながら、コロナ後の日本経済の趨勢(すうせい)を占い、経済格差の増大が日本社会の分断や経済低迷につながらないようしっかりとした目配りをすることにあるでしょう。反対が多い五輪も、いざ開催されたらみんな喜んで観戦するのかもしれませんが、一過性のイベントに多くのものを費やして、肝心のコロナ後の社会を見失うことのないようにしたいものです。

【プロフィル】山本一郎

 やまもと・いちろう 昭和48年、東京都出身。慶応大卒。専門は投資システム構築や社会調査。情報法制研究所事務局次長・上席研究員。次世代基盤政策研究所理事。

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