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【主張】カシミール問題 インドは強圧姿勢改めよ

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 インドのモディ政権が、同国で唯一、イスラム教徒が多数を占める北部ジャム・カシミール州の自治権を剥奪した。

 70年続いた同州の自治権は、地元との話し合いもないまま、大統領令で剥奪が発表され、そのための憲法改正手続きが上下両院で行われた。

 政府は同時に、治安部隊を大挙、同州に派遣して厳戒態勢を敷き、州内の政治家や独立運動家ら多数を拘束した。同州の電話やインターネットは遮断され、集会も禁止された。

 同州を含むカシミール地方は、イスラム教を国教とする隣国パキスタンとの係争地である。自治を奪った上、政府直轄として実効支配を強める狙いだろう。

 反発や不満を力で押さえ込み、性急に現状変更を図るのは乱暴すぎる。自治権剥奪の撤回も含め再考を求めたい。強圧姿勢をやめなくてはならない。

 インドは1947年の独立以来、言論の自由が保たれ、選挙により政権が争われてきた。人口は13億を超え、「世界最大の民主主義国家」とも称される。

 日本や欧米諸国などが信頼し、中国やロシアなど権威主義的な国家と対抗するパートナーとみなすのはそのためである。

 モディ首相は「テロの温床をなくす」と述べたが、強引な手法で事を進めるのは、中露両政府の強権手法と大きく違わない。

 自治権剥奪に伴う重大な懸念は、パキスタンとの緊張の高まりである。パキスタンは「民族浄化だ」と非難し、貿易停止など対抗措置を発表した。

 印パ両国はカシミール地方の領有権をめぐって敵対し、3度にわたり戦火を交えた。今年2月には、インド治安部隊が殺害されたテロ事件をきっかけに双方の空軍機が撃ち合う事態となった。

 印パ両国は核拡散防止条約(NPT)の枠外で核武装している。対立がエスカレートする状況は危険極まりない。地域の問題ではすまないとの認識が必要だ。

 日本を含む各国が、両国それぞれに働きかけ、強く自制を求めていかなければならない。

 中国はカシミール地方の一部を実効支配し、パキスタンとともにインドを非難している。国連安全保障理事会での議論では、常任理事国の中国は影響力を行使しやすい。中国が絡み、問題が複雑化する事態も憂慮される。

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