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【主張】中国選手の疑惑 東京五輪へ監視緩めるな

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 疑惑の主を心から称賛する気にはなれない。

 2020年東京五輪の主役の一人として、このまま迎えていいのか。

 韓国・光州での世界水泳選手権で、競泳男子自由形の孫楊(中国)が自身に持ち上がった薬物検査妨害の疑惑が晴れぬまま出場を認められ、2冠を達成した。

 孫は五輪に3度出場し、金メダル3個を獲得した中国競泳界の顔だ。28日に閉幕した世界選手権では、400メートル自由形を4連覇し、200メートル自由形も制したが、各国のライバルは表彰台で孫と並んでの記念撮影や握手を拒んだ。

 昨年9月に行われたドーピングの抜き打ち検査で、孫が自身の血液検体の容器を破壊したとする国際水泳連盟(FINA)の内部文書を、オーストラリア紙が7月半ばにスクープしていたからだ。

 事実ならこれだけで十分、厳罰の対象となる。FINAが孫を警告で済ませたのは極めて不可解である。報道の真偽、処分の詳細について、FINAは明確に公表すべきである。

 世界反ドーピング機関(WADA)は処分が不当として、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に異議申し立てを行った。9月に審理が行われる見通しといい、裁定によっては世界水泳のタイトル剥奪や、永久追放の可能性を指摘する海外メディアもある。孫の弁護士も公聴会を開くことを求めたという。疑念を晴らす責任が本人にあることは言うまでもない。

 孫は14年にも禁止薬物の興奮剤が検出されたとして、3カ月の出場停止処分を受けた。今大会で見せたライバルらの不快感、拒絶反応は、むしろ当然だろう。

 日本の競泳界も、傍観者であってはならない。

 世界選手権の結果は各国の代表選考の重要な資料になる。孫が制した200メートル自由形では、松元克央(かつひろ)が2位に入った。金メダルなら東京五輪代表に内定していただけに、日本水連も真相究明を強く求めるべきではないのか。

 ロシアの国ぐるみのドーピングをめぐっては、国際オリンピック委員会(IOC)の弱腰が物議を醸した。今回のFINAの対応といい、統括組織による感度の鈍さが目に余る。

 最善の備えは事前摘発だ。東京五輪を台無しにしないためにも、疑いのある選手や国に対して、日本は監視を緩めてはならない。

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