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【主張】中国の国防白書 安定を損ねる威嚇を慎め

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 国際社会で認められない「力による現状変更」を目指す姿勢を、これほどあけすけに打ち出す文書も珍しい。4年ぶりに公表された中国の国防白書のことだ。

 軍事力の実態を示すデータも乏しく、政治宣伝の冊子にすぎない。白書と名乗れば批判を免れると思っているとしたら大間違いだ。

 米国への強烈な対抗意識が随所に見られる。米国を「一国主義」と断じ、「世界の戦略的な安定を損ねる」と批判した。だが、白書を見ても、軍事力を振りかざし、平和と安定を乱そうとしているのは中国の方だと容易に分かる。

 「台湾独立」の動きに対しては、中国軍が一戦を交えてでも阻止すると宣言した。来年の総統選をにらみ、台湾の人々を脅すつもりなら逆効果だ。米国は武器売却など台湾支援に努めている。自由と民主主義を共通の価値とする米台の結びつきは強まるだろう。

 上陸部隊である中国海軍の陸戦隊を、北海、東海、南海の三大艦隊と同格に引き上げたことも記した。日本と台湾への露骨な威嚇であろう。尖閣諸島(沖縄県石垣市)を中国の「固有の領土」と位置付け、周辺の日本の領海や接続水域に中国公船が侵入していることを「法による国家主権の行使」だと宣伝した。

 日中関係が「完全に正常な軌道」にないことが改めて明瞭となった。政府は、尖閣を含む南西防衛を強化し、航行の自由が保障されるべき南シナ海での国益をしっかり守ってほしい。

 白書は中露の軍事関係について「世界の戦略的安定に重要な意義」があると強調した。1950年代の中ソ蜜月を彷彿(ほうふつ)とさせる表現である。中露両軍機が23日、日本海で初めて共同パトロールを行ったのは偶然ではあるまい。

 トランプ米政権は、中国の軍事的脅威に備える方針だ。日本周辺を含むインド太平洋地域で、ロシアをも巻き込む中国の野望を阻むため、日米同盟強化が必要だ。

 白書は国内に関しても新疆ウイグル自治区での弾圧を隠そうとしない。中国国防省報道官は、香港の治安維持のため中国軍の出動が可能だと表明した。

 白書が「永遠に覇を唱えず、拡張せず、勢力圏を追求しない」と唱えても、国内外でしていることは正反対だ。今の中国には警戒を強め、向き合うほかない。

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