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【環球異見】G20と世界 「自由主義は時代遅れ」 プーチン発言に揺れた欧州

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6月28日、大阪でのG20サミットで集合写真に納まる首脳たち (ロイター)
6月28日、大阪でのG20サミットで集合写真に納まる首脳たち (ロイター)

 日本が初の議長国を務めた20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が大阪で行われた。米中対立を基軸としつつ、新興国の台頭で複雑化した国際社会のありさまを映し出すサミットだった。英紙は、存在感を見せたプーチン・ロシア大統領の発言を切り口に、“地盤沈下”が進む欧州について内省した。露紙は、自国が国際的孤立から脱却することへの期待感から、サミットが緊張緩和に有益だったと評価した。

 □英国 ガーディアン

 ■“影の主役”欧州に自省促す

 各国・地域の利害が複雑に絡み合ったG20大阪サミットで、欧州諸国の話題をさらった“影の主役”とも言うべき人物がいた。ロシアのプーチン大統領である。

 プーチン氏は、訪日を前にした英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、欧州の普遍的な価値観である自由主義を「時代遅れだ」と切り捨てたのだ。この発言は、米中のはざまで存在感を低下させる欧州連合(EU)の足元に、首脳やメディアの目を向けさせることとなった。

 プーチン氏はインタビューで、移民排斥などを求めるポピュリズム(大衆迎合主義)が勢力を増していると強調し、自由主義は力を失ったと語った。

 プーチン氏の発言に「まったく同意しない」とすぐさま反論したのは、EUのトゥスク大統領だった。自由民主主義は必要不可欠なものであると強調し、「本当に時代遅れなのは、権威主義、個人崇拝、オリガルヒ(ロシアの新興寡占資本家)による支配だ」と訴えた。

 英メディアはしかし、プーチン氏の発言が決して的外れなものではないとも受け止めている。

 英紙ガーディアン(電子版)は6月30日、「西欧諸国の民主主義はうぬぼれか? G20が再考を迫っている」と題したコラムを掲載した。「自由主義を定義し、その衰退期を決める上で、プーチン氏には政治学者として最も優れた資格はないかもしれない」。コラムはこう皮肉りつつ、「自由主義が全盛期でないことも確かだと思う」と指摘した。

 英国の国民投票によるEU離脱決定や、イタリアの右派与党「同盟」を率いるサルビーニ内相ら、EU懐疑派のポピュリズム勢力の台頭-。

 同紙の28日付コラムもこうした事例を挙げ、西欧に限らず、欧州の全域で自由主義の衰退は顕著だと強調した。

 トゥスクEU大統領の出身国ポーランドについては、右翼ポピュリズム政党が「報道の自由を攻撃し、抗議の権利の弱体化を試み、行き過ぎた移民批判を繰り返している」と分析した。ハンガリーについては「すでに事実上プーチニズム(プーチン主義)の国だ」と指摘。同国のオルバン首相はオリガルヒに囲まれて非自由民主主義を誇示していると断じた。

 今回のG20サミットは米中貿易戦争に翻弄された。G20と合わせて行われた米中首脳会談で貿易交渉の決裂が回避されたことについて、英メディアは一定の成果だとしている。

 ただ、1日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は、保護主義の歴史的過ちを繰り返さないと誓約したロンドンでのG20サミット(2009年)に言及。昨年に続き、今回の首脳宣言でも「保護主義と闘う」の表現が明記されなかったことに疑問を呈した。(ロンドン 板東和正)

 □ロシア 独立新聞

 ■「成功」評価、孤立脱却に期待

 ロシアのメディアはG20大阪サミットについて、プーチン露大統領とトランプ米大統領の会談が約1年ぶりに実現し、各国の協調姿勢が打ち出されたとして、「ロシアにとっても世界にとっても有意義かつ成功裏に終わった」と高く評価した。

 1日付の露有力紙、独立新聞は「大阪での5つの重要な帰結」と題した記事を掲載。今回のG20の主要な成果として、米露首脳会談の実現▽米国による新たな対中制裁発動の延期▽G20の延長線上での米朝首脳会談の開催-などを挙げた。

 プーチン、トランプの両首脳は、2021年に期限が切れる米露の新戦略兵器削減条約(新START)の延長をめぐり、外相間の協議を開始することで一致。プーチン氏は、来年5月の対ドイツ戦勝記念行事にトランプ氏を招待するなど、悪化した両国関係の改善に意欲を見せた。

 プーチン氏は今回のG20で、トランプ氏や英国のメイ首相ら、ここ数年で最多となる12カ国の首脳と会談を行い、ロシアの存在感を示すことに成功した。露主要メディアには、14年のクリミア併合以降の国際的孤立から、ロシアが脱却することへの期待感がにじみ出ていた。

 独立新聞の記事は「G20サミットは、世界政治の多くの問題点について、歩み寄りが近いという感触を与えた」とし、米露や米中の対立に一定の歯止めがかかるとの見方を示した。

 こうした楽観的な認識には異論があろう。プーチン氏はG20直前の英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、自由主義に否定的な考えを述べ、ロシアの国益や価値観に反する問題で決して妥協しない意思を強調した。

 G20でプーチン氏は、最新のロシア製防空システム「S400」導入をめぐって米国と対立するトルコのエルドアン大統領や、記者殺害事件で対米関係が悪化したサウジアラビアのムハンマド皇太子と会談し、関係強化を確認。「非欧米的な大国」としての旗を下ろす考えはないことを示し、対立の継続を予感させた。(モスクワ 小野田雄一)

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