PR

【主張】認知症大綱 地域一体で予防の徹底を

PR

 認知症になっても暮らしやすい社会を作る「共生」と、「予防」を2本柱とする政府の認知症大綱が決まった。

 5月の素案では、「70代での発症を10年間で1歳遅らせる」ことが数値目標として盛り込まれたが、これを参考値に格下げした。当事者や与党から「偏見を助長する」などと批判を受けたためである。

 認知症の発症メカニズムははっきりしておらず、数値目標に明確な根拠はない。数字が独り歩きしないよう、参考値にとどめたのは妥当である。

 予防や健康づくりの重要性は論をまたない。大綱は「予防」の意味について、認知症にならないことではなく、発症や進行を遅らせることだと定義した。

 そのための手段として、公民館などで体操をしたり、趣味を楽しんだりする「通いの場」の拡充を挙げた。孤立を解消し、地域で役割を持つことが、予防に役立つ可能性がある。

 政府が予防の意義を訴えることに対し、健康ビジネスの振興を狙っているなどとする批判もあるが本質を見誤ってはならない。

 加齢で引きこもりがちになったり、配偶者と死に別れて人と話すことさえおっくうになったりする人もいる。日頃から近隣との付き合いがあれば生活は再び明るさを取り戻すかもしれない。

 警察庁によると、昨年中に認知症か、その疑いが原因で行方不明になった人は約1万7千人に上った。通いの場の拡充でコミュニティーが再生すれば、行方不明者も早く見つけられよう。こうした取り組みは共生にも資する。

 厚生労働省が今年3月に公表した「これからの地域づくり戦略」には、認知症に限らず、健康づくりを促す各地の取り組みが紹介されている。ご近所さんに代わってゴミ出しや犬の散歩、買い物代行をする地域もある。地域の特性に応じて、工夫をこらした取り組みが広がるといい。

 予防や健康づくりは、医療や介護費を抑制する方策として捉えられることが多い。国や自治体にはその意図もあるだろう。だが、予防が社会保障費を抑制するとはかぎらない。長生きすれば、むしろ医療費や介護費が増えるという説もある。

 予防は社会保障費抑制のためではなく、幸せな生活を送るためにある。履き違えてはいけない。

この記事を共有する

おすすめ情報