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【主張】実刑確定の男逃走 保釈のあり方急ぎ見直せ

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 神奈川県愛川町で、実刑が確定した保釈中の男が逃走した。刃物を振り回す男を取り逃した横浜地検の職員や同行した神奈川県警厚木署員の大失態である。

 男は刃物を所持したままとみられ、愛川町と同県厚木市の教育委員会は公立小中学校45校で児童生徒の安全が確保されるまで登校を見合わせることを決めた。住民への影響は大きい。

 町への連絡が逃走後約3時間後に遅れた地検の対応も問題である。町は防災無線で町民に注意を喚起したが、この間に新たな犯行があれば、どう責任を取るつもりだったのか。

 そもそも男は、なぜ保釈中だったのか。

 男は窃盗、傷害、覚せい剤取締法違反などの罪に問われ、昨年9月に横浜地裁小田原支部で懲役3年8月の実刑判決を受けた。男は東京高裁に控訴したが、高裁はこれを棄却し、今年2月に判決が確定した。男は控訴審中に保釈されたのだという。

 保釈の認められる要件は逃亡や証拠隠滅の恐れが高くない場合に限られる。逃亡しているではないか。保釈を許可した裁判所は不明を恥じ、謝罪すべきである。

 男はこれまで書面による出頭要請に応じず、検察側は自宅を複数回訪れたが、接触できていなかった。どの時点においても、保釈は取り消されるべきだった。

 保釈請求を許可する割合(保釈率)は平成20年の14・4%から29年には31・3%と倍以上に増加している。特別背任などの罪で起訴された日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告も証拠隠滅の恐れを指摘されながら保釈された。

 一方で、保釈中に被告が逃走したり、再犯に及んだりするケースは後を絶たない。29年中に保釈中に再犯で起訴された被告は246人を数えた。中には、覚せい剤取締法違反罪に問われた暴力団員が保釈中に男性を射殺し、拳銃を所持したまま逃走しているとみられる最悪の事例もある。

 3月には殺人罪で懲役11年の実刑判決を受け控訴中の被告に東京地裁が保釈を認める決定を出し、東京地検の抗告を受けて東京高裁が地裁決定を取り消していた。

 刑事司法の目的は社会の安全や公平性を守ることにある。行き過ぎた現行の保釈のあり方が、その目的に適(かな)っているとはいえまい。早急に見直す必要がある。

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