PR

【主張】日本タンカー攻撃 国の基盤揺るがす危機だ 「重要影響事態」にも備えよ

PR

 中東の要衝であるホルムズ海峡で、日本などのタンカー2隻が何者かに攻撃された。イラン核合意から離脱した米国が、イランに対する経済制裁を強めるなど中東情勢が緊迫化する中で発生した。

 日本政府は攻撃した勢力について見解を示していないが、米国のポンペオ国務長官は記者会見で、攻撃に使われた武器の分析などから「イランに責任がある」と名指しで批判した。イラン側は反発し、米国の関与を主張した。

 安倍晋三首相がイランを訪問して首脳外交を行ったのと時を同じくして起きたタンカー攻撃は、日本の国家としての基盤を大きく揺るがす、深刻な事態であると受け止めなくてはならない。

 ≪安全航行確保に全力を≫

 卑劣な攻撃は決して許されない。攻撃した勢力を割り出し、暴挙を繰り返さないよう押さえ込む必要がある。海上石油輸送の安全を期すことが欠かせない。

 同時に、エネルギー自給率の向上など、資源を安定的に確保する取り組みが急務だ。

 ペルシャ湾とアラビア海を結ぶホルムズ海峡は、世界の原油輸送量の2割、日本向け原油の8割強が通過する、世界の海上交通の重要海域だ。日本は火力発電所の主力燃料である液化天然ガス(LNG)もその20%以上をホルムズ海峡経由で輸入しており、日本の生命線ともいえる。

 だが、5月にはサウジアラビアの石油タンカーがホルムズ海峡付近で攻撃を受けるなど、緊張が高まっている。

 安倍首相はイランを訪問し、最高指導者や大統領と会談した。核合意などをめぐり対立を深める米国とイランの両国間や地域の緊張緩和に資する外交努力をこれからも果たすことが、日本自身の国益に直結する。

 中東などを統括する米中央軍は13日付で、今回攻撃された日本のタンカーにイラン革命防衛隊の小型船が接近し、タンカー船腹に吸着したまま不発だった機雷を回収する様子だという映像を公表した。イランが攻撃の物証を回収しようとしたとの見方である。

 菅義偉官房長官は会見で、米国と緊密に連携しながら情報収集中だと説明した。再発防止のためにも、攻撃した勢力を速やかに割り出してもらいたい。

 関係国の努力にもかかわらず事態が悪化し、ホルムズ海峡の安全な航行が極めて困難になるケースにも備えなければならない。

 防衛出動の対象でなくとも、海上自衛隊の艦船や航空機をホルムズ海峡へ派遣し、日本など各国のタンカーを守る必要が出てくる可能性もある。その際、米国など有志国との協力は欠かせない。現に海自は、海賊対処法に基づき、各国海軍と協力してソマリア沖で民間船舶を守っている。

 ≪エネ自給率の向上図れ≫

 米・イランの軍事的緊張が一層高まることで、ホルムズ海峡に機雷が撒(ま)かれる事態なども否定できない。

 安全保障関連法上の重要影響事態や、集団的自衛権を限定行使する存立危機事態として、海自による機雷掃海などが求められるかもしれない。海自は平成3年、ペルシャ湾での機雷掃海に当たっている。万が一に備えることは国家の役割といえる。

 政府は今回のタンカー攻撃を受け、国内の海運会社に安全航行上の注意喚起を行った。当面は原油などの資源輸入に影響はないとしているが、国際市況では原油相場が一時大きく上昇するなど波乱もみられる。

 こうした事態を踏まえ、日本がエネルギー安全保障を確立する取り組みを改めて強化すべきなのは言うまでもない。

 わが国のエネルギー自給率は8%まで落ち込んでいる。東京電力福島第1原発事故後、安全対策の強化などで原発再稼働が大幅に遅れているためだ。これは東日本大震災前の半分程度にすぎず、主要先進国では最低水準にある。

 安全性を確認した原発の再稼働を急ぐほか、国産電源である再生可能エネルギーの活用を含め自給率を高めたい。

 海外からの原油輸入が途絶える非常事態に備え、日本は国と民間合わせて半年分の石油を備蓄している。だが、火力発電所向けのLNGは設備などの関係で備蓄されておらず、2週分の在庫しかない。電力の安定供給のため、LNG備蓄の検討も進めるべきだ。

この記事を共有する

おすすめ情報