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【主張】NHK同時配信 公共放送の信頼が前提だ

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 NHKのすべての番組をインターネットでも流す「常時同時配信」を可能にする改正放送法が成立した。

 スマートフォンでも番組が見られるようになるのは一見便利のようだがシステム設備に多額の投資を要するなど多くの課題をはらんでいる。視聴者の受信料に支えられる公共放送としての役割がある。拙速に進めてはならない。

 NHKは、東京五輪の聖火リレーが始まる来年3月に間に合わせる考えで、今年度中に常時同時配信を実施するという。

 受信料を払っている世帯では、常時同時配信をスマホなどで見る場合、追加負担は求めない。だが受信料契約が確認できない場合、画面にメッセージを表示し視聴を制限する。テレビ離れの中、テレビを持たずスマホなどで視聴する人たちからも受信料を徴収する可能性が高いといわれる。

 NHKは同時配信を放送の補完と位置づけてきた。一方、経営計画などではネットを活用した「公共メディア」への進化をうたっている。ネット配信のあり方など将来像をもっと示すべきだ。

 受信料という安定収入に支えられた独占や肥大化が過ぎれば、民放の事業を圧迫し、二元体制で築かれてきた放送メディアの健全な競争、発展につながらない。同時配信を進める上で民放との役割分担を含め、連携が欠かせない。

 受信料をめぐる一昨年の最高裁判決は、「公共の福祉」をかなえるNHKの放送目的を重視し、広く視聴者が負担する受信料の支払いを法的義務とした。

 公共を担う統治・経営改革は、常時同時配信を可能にした放送法改正でも前提となってきたことである。コスト意識の甘さや組織統治(ガバナンス)の緩みなど、公共的役割を忘れたかと疑わざるを得ない事案がなお絶えない。

 国際放送「NHKワールド JAPAN」で昨年11月に放送されたドキュメンタリー番組ではあきれた問題が発覚した。家族や友人をレンタルする会社の紹介で、利用客として登場した男女が同社のスタッフだった。現場まかせでチェックの甘い体質はこれまでも指摘されてきたことである。

 「正確、公平・公正な情報」「日本と国際社会の理解促進」など、本来の使命を忘れたままの同時配信は、公共放送への不信を広げるだけである。

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