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【主張】欧州議会選挙 多様性ふまえ統合深化を

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 欧州連合(EU)の統合を深化させていくための歩みは、かろうじて維持されそうである。

 欧州議会選挙は、EU拡大に懐疑的なポピュリズム(大衆迎合主義)政党が伸長した。

 議会安定を支えてきた親EUの中道系2大会派は、初めて過半数を割り込んだ。リベラル派と緑の党を合わせて多数派を確保した形である。

 EUの分断が深まれば、これに乗じてロシアと中国が影響力拡大を図ろうとするだろう。世界経済にも悪影響を及ぼしかねない。

 これを避けるためにも、選挙結果に表れた域内諸国の不満を真摯(しんし)に受け止め、結束を取り戻せるよう知恵を絞ってもらいたい。

 フランスでは、ルペン党首の極右「国民連合」が与党を下した。イタリアではサルビーニ内相が率いる「同盟」が第1党に躍進し、英国では早期離脱を公約とする「離脱党」が得票率約32%でトップとなった。いずれも移民の受け入れや格差拡大への不満を吸収したことが追い風となった。

 中東やアフリカから流入した移民への反発は、その経路となるイタリアやスペインなどの地中海沿岸や東欧諸国で特に強い。治安が悪化し、雇用を奪われるという懸念が高まっているためだ。

 EUは経済に始まり、外交や安全保障、司法・警察などで段階的に共通性を高めてきた。加盟国は28カ国に増えた。西欧や旧共産圏諸国など経済体制や社会が異なる国々が集まっているため、所得格差や政策目標の違いも目立ち、統合深化を難しくさせている。

 特に顕著なのが、債務危機の震源となったギリシャやスペインなどの南欧諸国と、経済力のある仏独との南北問題である。多くのシリア移民が流入したポーランドやハンガリーなどの東欧諸国が、その扱いをめぐって西欧諸国に反発した東西問題もある。

 これらの構造問題に対し、粘り強く打開策を模索することが統合深化の前提となろう。

 各国の多様性をふまえず、これを縛る共通政策を急げば、かえって遠心力が働き、ポピュリズム勢力が拡大しかねない。

 日本にとってEUは、民主主義や法の支配などの価値観を共有する重要な存在である。経済連携協定(EPA)も発効し、経済のつながりも強まった。分断が進まぬよう連携を深めていきたい。

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