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【主張】認知症大綱案 暮らし易い環境が第一だ

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 政府は認知症対策の行動計画となる「認知症大綱」の素案をまとめた。「予防」と、認知症の人が暮らし易(やす)い社会を目指す「共生」を2本柱に挙げ、「70代の発症を10年間で1歳遅らせる」と明記した。

 令和7年までに70代の認知症の割合を6%減らすことを目指す。具体的には、70代前半を3・6%から3・4%に、70代後半を10・4%から9・8%に引き下げる。

 ただし、掲げた数字に振り回されてはいけない。認知症の予防には適度な運動や健康的な食事、禁煙などが有効とされるが、科学的な根拠は十分でないからだ。

 それでも大綱の方向性は評価できる。政府は具体策として市町村が行うスポーツ教室の充実や、公民館での公開講座の実施など「通いの場」の拡充を挙げている。

 地域によっては認知症の人に限らず、住民が誘い合って参加し、一緒に買い物に行ったり、遠出したりする効果も生まれている。個々の生活が活発になり、地域との関係も密になる。いざというときに助け合うこともできよう。

 早期診断は重要だが、治療だけでなく、生活継続のための細やかな情報が必要だ。「早期診断が早期絶望になっている」との声さえある。今まで通りの暮らしを継続できるよう、環境を整えることが不可欠だ。

 政府は認知症の人が暮らし易い「バリアフリーのまちづくり」を掲げている。1人で買い物に行っても支払いが難しい。銀行のATM(現金自動預払機)の前で途方に暮れ、自動改札がうまく通れない。生活にはそうしたさまざまな「バリアー」がある。

 これらを解消するために何ができるか。短時間で正しい知識と理解を身につけるための「認知症サポーター養成講座」もある。自治体に問い合わせてみてほしい。

 当事者同士が集まり、生活の工夫や不安を乗り越えた経験を共有する「本人ミーティング」も広がっている。認知症になってからも前向きに、自分らしく暮らせる環境づくりが重要だ。

 大綱には、診断、治療法などの研究開発強化も盛り込む。治療薬の臨床試験に、認知症になる可能性がある人の参加を増やす仕組みを構築することを柱とする。認知症対策は国際社会共通の課題だ。研究開発の分野で日本がリードすることも期待したい。

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