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【主張】米中貿易協議 「覇権」封じる姿勢を貫け

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 トランプ米大統領が来月2日に予定していた対中制裁関税の強化を延期すると表明した。米中両国の閣僚級貿易協議の結果、「構造問題などで実質的な進展があった」ためだとしている。

 対中交渉を延長した上で、近く習近平国家主席と首脳会談を開き、最終合意を目指すというのがトランプ氏のシナリオだ。この通りに進めば、米中貿易戦争はひとまず沈静化する可能性がある。

 両国の全面的な衝突は日本を含む世界の貿易や経済の重大なリスク要因である。そこに打開の道筋がつく意義は大きい。

 だがそれは、不公正貿易や知的財産権の侵害、過剰な補助金など、中国の国家資本主義がもたらす根源的な問題を抜本的に改めさせることが前提である。

 トランプ氏が貿易赤字解消という目先の成果を焦り、構造問題で妥協しては元も子もない。経済、軍事面で覇権を追求する中国に対抗するのが米国の対中外交の基本であるはずだ。その姿勢を貫いて詰めの交渉に臨んでほしい。

 米国は閣僚級協議が不調に終われば、中国産品2千億ドル(約22兆円)分に課す追加関税を10%から25%に引き上げる方針だった。

 4日間の協議では、中国側が巨額の米農産物などを購入すると提案したほか、中国が人民元を安値に誘導しない「通貨の安定」でも一致した。中国が外国企業に求める技術移転の強要防止や知財保護でも進展があったという。

 問題は、中国が本気で改革に取り組むかどうかだ。国有企業に対する支援や、合意順守を担保する仕組みについて隔たりがあるとの報道もある。そうした中でトランプ氏が、大統領選を視野に前のめりになっていることはないか。

 米政権や議会内に、安易な合意に対して警戒があることもうなずける。中国との覚書の扱いをめぐり、トランプ氏と、対中強硬派である米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表の溝が表面化したのも気がかりだ。

 「新冷戦」とも評される米中対立は、貿易にとどまらない大国間の覇権争いである。腰を据えた長期戦となる覚悟が欠かせない。

 構造問題に切り込むこともなく米国産品の大量購入という中国の提案に飛びつき、安易に対中融和に傾斜するようでは、中国の覇権主義傾向を野放しにしかねない。米国はそう認識すべきである。

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