記事詳細
皇位継承の儀式における「課題」 麗澤大学教授・八木秀次
正論更新天皇陛下には平成31年4月30日に退位され、翌5月1日に皇太子殿下が新天皇に即位されることが決まった。5月1日は新元号になる。これらは昨年6月制定の「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が規定する政令による措置だ。
≪神経尖らせる「憲法への抵触」≫
一昨年7月13日のNHK報道と同年8月8日の「おことば」に端を発する天皇陛下のご退位について、政府は神経質なまでに憲法との整合性を図ろうとした。
憲法4条1項は「天皇は…国政に関する権能を有しない」とする。天皇陛下が直接、退位の意向を示され、それによって政府が動き、国会が退位を実現する法律を制定することになれば、この規定に反することになるからだ。
昨年6月1日、衆議院議院運営委員会で横畠裕介内閣法制局長官は「天皇の交代という国家としての重要事項が天皇の意思によって行われるものとした場合、これを国政に関する権能の行使に当たるものではないと言えないのではないかという問題」があると述べている。
菅義偉内閣官房長官も、同日の同委員会で「昨年8月の天皇陛下のお言葉を今回の立法の直接の端緒として位置づけた場合には、天皇の政治的権能の行使を禁止する憲法第4条第1項に違反するおそれがあると考えます」と語っている。
一貫して退位は天皇陛下のご意思によるものではなく、天皇陛下がご高齢であり、ご公務が十分にできなくなっておられることなどの客観的な状況を受けて政府が検討し、国民の代表機関である国会が退位を実現する法律を制定したとの論理を採用している。
≪「譲る」という姿勢を回避≫
同じことは今後検討される皇位継承の儀式についても押さえておかなければならない。天皇陛下が皇位を新天皇に「譲る」という意思が儀式に見られれば、憲法4条1項に抵触することになるからだ。例えば、退位の宣言の際は、皇室典範特例法の規定によって皇位を退く旨を述べられるにとどめ、新天皇に皇位を「譲る」との文言はお避けにならなければならない。
新天皇が皇位の象徴である「三種の神器」等を受け継ぐ「剣璽等承継の儀」も、天皇陛下は剣璽等を自らの管理から手放すことにとどめ、新天皇に「譲る」との姿勢はお避けにならなければならない。具体的には、天皇陛下が平成31年4月30日に宮内庁長官を介して設けられた「案」と呼ばれる台の上に剣璽等をいったん置かれ、これをもって手放されたとの形をとる。これらの儀式は天皇陛下の国事行為となる。

