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【新聞に喝!】子宮頸がんワクチン、感情論が先行し接種忌避を扇動…メディアは反省を ブロガー・投資家 山本一郎

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山本一郎氏
山本一郎氏

 医師でジャーナリストの村中璃子さんが、英科学誌ネイチャーなどが主宰するジョン・マドックス賞を受賞した件については、産経新聞でも「ジョン・マドックス賞に日本人医師 村中璃子氏、子宮頸(けい)がんワクチン問題について発信」(「産経ニュース」昨年12月2日)として速報しており、広く村中さんの功績と、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の有効性を改めて確認する内容でした。

 ところが、実際に受賞を速報という形で報じたのは産経新聞と北海道新聞のみで、その後の他紙やテレビ局、週刊誌などの報道は鈍いものでした。公共の利益に関わる問題について、障害や敵意にさらされながらも健全な科学とエビデンスを広めるために貢献した個人に対して与えられる賞を日本人として初めて受賞したにもかかわらず、国内メディアの動きが鈍かったのは気になるところです。

 HPVワクチンの接種にあたっては、被害者団体など反ワクチン団体の主張も慎重に考えるべきでしょう。

 ですが若い女性が子宮頸がんに罹患(りかん)して子宮摘出などで子供をもうける機会を失ってしまうことを防ぐベネフィットや、反ワクチン団体が主張する体調不良などの因果関係が、果たしてHPVワクチン由来であるかはっきりしない部分などがしっかり検討されないまま、感情論が先行してしまい冷静な政策議論が行われてこなかった反省はあります。

 その結果、HPVワクチンの接種率が日本では大幅に下がる異常事態に陥りました。反ワクチンに傾いた扇動的で情緒的な報道が理由となり、日本全体がHPVワクチンに対する根拠の乏しい接種忌避に繋(つな)がってしまったことは、日本のメディアが襟を正すべき部分ではないかと思います。

 村中さんのマドックス賞受賞は快挙であることに間違いはありませんが、なぜ、このような間違った非科学的な言説が世に出て悩める女性たちにHPVワクチン忌避の動きが広まり、接種率の大幅な下落を容認するような政策になってしまったのか。

 また、今後も公衆衛生の諸問題について、正しい情報に基づいた報道で社会的な理解に結び付けるために関係者はどのような行動をすべきなのか、単なる反省から一歩進めて具体的な解決と、根拠に乏しい健康情報の流通の防止を常に考えていかなければなりません。

 感情面で「かわいそう」「どうにかしなければ」と考えるのは人間として正しいことです。一方で、正しいことを感情に流されず、証拠に基づいて科学的に主張し続けることの大切さを、村中さんが身をもって教えてくれたのが本件であったと思います。

 これを受け止めて、どのような議論をし、社会をあるべき方向に導いていくのか、本件がメディアに問いかける意味は重大ではないでしょうか。

                  

【プロフィル】山本一郎

 やまもと・いちろう 昭和48年、東京都出身。慶応大卒。専門は投資システム構築や社会調査。

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