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【主張】神戸5人殺傷 病理を解明して凶行防げ

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神戸5人殺傷 病理を解明して凶行防げ

主張更新

 凶行は防げなかったのかと、暗澹(あんたん)たる思いがする。神戸市北区で起きた5人殺傷事件は、包丁と金属バットが使われ、死亡した祖父には十数カ所もの刺し傷や殴打痕があったことから、強い殺意がうかがえる。

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 逮捕された26歳の容疑者は、定職に就かず、家に引きこもりがちだったという。鬱屈した疎外感が暴発したのだろうか。それとも家庭内のトラブルが原因になったのか。

 事件の病理を解明しなければ、悲劇は繰り返される。

 警察庁によると、昨年の殺人および未遂事件770件のうち、親族間のものは425件(55%)に上った。総数は減少したが、親族間の割合は増加している。

 さらに平成26年の実態調査では、親族間の殺人や傷害致死のうち父母や祖父母が被害者になったのは35%。被害者と加害者の約8割が同居していた。

 動機別では、介護や育児疲れ、金銭困窮などによる「将来を悲観」が33%、次いで「不仲・トラブル」が25%、「加害者の心神喪失」も21%あった。

 今回の事件の容疑者は成人だが、少年による凶悪事件と共通する未熟さを感じる。

 少年犯罪が多発した12年に岡山県で、母親を金属バットで殴り殺した少年に、岡山家裁は「情緒性が未発達で、円滑な対人関係を築く能力に乏しく、他人との共感性に乏しい」と指摘した。

 また同年、大分県で起きた一家6人殺傷事件では、大分家裁が「少年は家庭で十分な愛情を受けずに生育したため、他者から自分を受け入れてもらえるかどうか常に不安を感じ、非常に強い自己防衛的な構えのある人格を形成した」と、要因として家庭・養育環境をあげた。

 人格形成期における家庭の役割は、学校にも増して重要である。しかし、親は子育てに自信を欠き、叱るべきときに叱れない。

 その結果、見せかけの「おとなしい」「目立たない」子が、「命の大切さ」や「やっていいこと、悪いこと」を身につけずに育つ恐れもある。

 事件が起きて初めて、シグナルがあったことに気づく。が、警察や行政は家庭内、家族間の問題に踏み込むことは難しい。

 親も子も悩みを内にため込まず、暴発する前に芽を摘む社会の仕組みが必要だ。