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【一筆多論】おままごと「お母さん役」なり手なく? 近頃気になる親子の関係 沢辺隆雄

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おままごと「お母さん役」なり手なく? 近頃気になる親子の関係 沢辺隆雄

一筆多論更新

 以前、「やばいぞ日本」という本紙連載のなかで、教育が抱える課題を取材したときのことだ。保育園児のおままごと遊びで「お母さん」役の人気が陰り、子猫など「ペット」役が登場して人気だと聞いて取り上げた。

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 子供たちは、かわいがってもらえるペットになりたがり、かつて奪い合いだったお母さんの役は、なり手がない。しぶしぶ引き受けた子も、あれこれ命令ばかりしている。うろうろしている子に、何の役?と聞いたら「お父さん」役だった、というあまり笑えない話だった。

 その後、「お母さんごっこ」というのもあると聞いた。全員がお母さん役で、連れだってファミレスでおしゃべりする様子などをまねする。旦那やわが子の担任教師の悪口などをひそひそ言い合う口調は真に迫ると。子供は大人のことをよく見ている。

 ひるがえって、ふだんから子供たちの様子をどれだけ見ているか。子供の話をゆっくり聞く機会を持っているだろうか。夏休みを迎え改めて考えてほしいことだ。

 親子関係について気になる調査結果があった。社会保障や生活設計などを研究する「明治安田生活福祉研究所」などが、中学生以上の子を持つ親約1万人と、15歳以上の子供ら約6千人に聞いた意識調査で、親子の関係は「良好」の一方で、子供のことを理解している自信がないという父親は3割以上、母親は2割以上いた。

 調査によると、親と2人で外出することに「抵抗がない」という割合も、母と息子のケースを含めて高かった。

 しつけでは、ほめて育てる親が多くなっている傾向がでた。一方で「父親からほめられることも叱られることもなかった」という子供が2割近い。「反抗期がなかった」という子は約4割で、親の世代より多い。友達のように距離感が近い親子が目立つが、本気でぶつかり合うような関係はなくなっているのだろうか。

 本紙の教育コラム「解答乱麻」の執筆者で教育学者の高橋史朗・明星大学特別教授から、母親と父親の役割、母性と父性の違いについて聞いたことがある。

 母は船がいつでも安心して戻ってこられる港、父をいざというとき進路を照らす灯台にたとえていた。子供にとって母性、父性のどちらの愛情も欠かせないものだという。母親が双方の役割を果たす場合もある。何かの事情で親と暮らせない場合でも、祖父母や教師、周りの人たちが母性、父性の両方をバランス良く配慮して見守ることが必要だという。

 先の研究所の調査では、不安や悩みを相談する相手は「母親」や「友人」が多いが、相談相手がいないという答えも男子で約4割、女子で2割近くあった。

 学校現場を知る人からは、子供に積極的に話しかけ、聞こうとする教師が少なくなったと危惧する声も聞く。ほかにやることがあるのだろうか。

 参院選や都知事選などを通し、子育て支援が注目されるが、給付型の助成策以外に、教育の中身をどうするか、隠れがちな課題についても忘れず考えたい。(論説副委員長)