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【主張】トランプ現象 「痛快だから」では済まぬ

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トランプ現象 「痛快だから」では済まぬ

主張更新

 歯切れがよいといっても、その主張は過激、排他的で、暴言、失言を連発する。大方は早々に自滅すると予想したのだろうが、その勢いは止まらない。

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 米大統領選に向けた共和党の候補指名争いで、不動産王、ドナルド・トランプ氏が大差をつけて先頭を走っている。

 序盤戦最大の山場、「スーパーチューズデー」で、さらに優位に立った。

 唯一の超大国、米国の指導者を決めるレースである。世界の将来に大きな影響を与えるだけに不安を覚えないわけにはいかない。

 トランプ氏は「貿易で日本、中国、メキシコを打ち負かす」と連呼する。有無を言わせず通商紛争を仕掛けるかのような、内向きで独善的な物言いだ。

 テロ事件に関連したイスラム教徒入国拒否の発言に至っては、極めて不適切だ。

 その言動をみる限り、アジア・太平洋地域の安定の要である日米同盟の意義を理解しているとは思えない。この人物では、日本の安全保障に悪影響を及ぼすとの懸念も持たれよう。

 ヘイデン元米中央情報局(CIA)長官は、トランプ氏が最高司令官である大統領に就任しても「米軍は命令に従わないこともありうる」とまで指摘した。

 政治経験のないトランプ氏の人気は、既成の政治への不満の反映であり、大衆の本音をずばり口にするポピュリズムにある。

 オバマ政権が招いた「弱い米国」への批判や、同政権下で広がった保守とリベラルの両極化などが背景にあろう。

 富裕層に対する不公平感など、米国民にやり場のない不満があることも無視できない。

 共和党内には、主流派の候補が絞り込まれればトランプ氏に勝ち目はないとの楽観的な見通しがあったが、有権者の不満を読み切れていなかった。

 「トランプ現象」が米国の政治、社会の課題を示しているのだとすれば、対立候補はその問題点を指摘し、自ら克服する手法や政策を明確に提示して、巻き返しを図る必要がある。

 民主党ではヒラリー・クリントン前国務長官がリードを固めた。共和、民主両党の予備選は続く。各候補とも世界の次期指導者にふさわしい品格と英知を競い合ってほしい。