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同じ犯罪でも保釈率に差「不公平」 裁判官判断に懸念の声も

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 裁判所が拘置所に収容された被告の保釈を許可したり、逮捕された容疑者の勾留請求を却下したりするケースが増えている。裁判準備の機会を十分与えることや、否認すれば長期拘束になることを「人質司法」と批判されたことが背景にある。ただ、身柄拘束を解かれた被告や容疑者が逃亡や証拠隠滅を図るケースもあり、裁判官の「積極的な判断」を懸念する声は多い。

 「クスリなら、ここでやるのがお得だ」

 ある検察関係者は、かつて関東の地検支部で勤務していた際、薬物事件の容疑者が口にした言葉に驚いた。管内の地裁支部は、保釈率や勾留請求の却下率が周辺の裁判所より高かったが、そうした情報を容疑者も把握していたからだ。

 「原因は当時所属していた裁判官にあったようだ。同じ犯罪をどこでするかによって、勾留期間や保釈の判断があまりにも違ってくるとしたら不公平だ」。検察関係者は嘆息した。

 裁判所が被告や容疑者の身柄拘束を解く判断基準は年々緩和されている。最高裁や犯罪白書によると、平成22年には保釈率が18・0%、勾留請求の却下率は1・1%だったが、令和元年にはそれぞれ32・0%と5・2%に上昇した。

 背景には、平成21年に始まった裁判員制度に伴い、公判前整理手続きが導入されたことが挙げられる。被告と弁護人の打ち合わせ時間を十分に確保すべきだという考えが裁判官側に浸透したためだ。また、否認した被告の拘束が長期に及ぶことに、弁護士から「人質司法」との批判が高まったことも影響している。

異例の5カ月勾留

 「最強の捜査機関」と呼ばれる東京地検特捜部の勾留請求でも、裁判所は慎重に見極めるようになった。

 特捜部は平成30年12月、日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告(66)の役員報酬が過少記載された事件で、金融商品取引法違反容疑でゴーン被告らを再逮捕した。東京地裁は10日間の勾留は認めたが、さらに10日間の勾留延長は認めなかった。

 最初の逮捕容疑は22~26年度分の過少記載が対象で、再逮捕容疑は27~29年度分。検察OBからも「単に時期を分けて再逮捕しただけでは、検察に厳しい目を向ける近年の裁判所は納得しない」との声が出た。

 一方で、裁判所の判断に弁護側が不満を募らせるケースもある。

 河井案里前参院議員の陣営をめぐる違法報酬事件で、公選法違反罪に問われた夫で元法相、克行被告(57)=公判中=の元政策秘書、高谷真介被告(44)=1審で執行猶予付き有罪判決=は、弁護側の4度目の申請で昨年8月、広島地裁に保釈が認められた。勾留は約5カ月に及んだ。

 保釈は起訴直後や初公判後に認められやすいが、無罪主張の高谷被告は証人尋問終了後まで認められなかった。しかし、同じ事件で案里前議員の元公設秘書=執行猶予付き有罪確定=は起訴2日後に保釈。公判で起訴内容を認めたが、報酬決定への関与は否定した。

 弁護側関係者は「執行猶予が見込まれる罪で、ここまで勾留が長引くのは異例だ。2人の違いは認否だが、元公設秘書も実質否認だった。裁判所は具体的な罪証隠滅の恐れを測れていない」と批判する。

増える再犯、逃亡

 刑事訴訟法では保釈請求について、逃亡や罪証隠滅の恐れがある場合などを除き、原則認めなければならないと定める。ただ、裁判官の判断に不信感を抱く声は多く、「保釈ありき」で偏った裁判官の存在を指摘する検察幹部までいる。

 実際、保釈をめぐっては問題が相次ぐ。法務省などによると、保釈中に逃亡し、保釈取り消しとなったのは平成28年の4人から令和元年には33人に急増。保釈中の再犯も平成15年は61件だったが、令和元年には285人となった。平成31年1月には、覚醒剤取締法違反罪で起訴され、保釈中だった元暴力団組員の男が射殺事件を起こした。

 別の検察幹部は「保釈した被告が逃亡や再犯をしても、判断した裁判官に何のおとがめもない仕組みがおかしい」と指摘。検察OBの弁護士は「地方の裁判所で、専門外の民事担当の裁判官らが持ち回りで保釈を判断していることにも原因があるのではないか」と推測する。

 こうした声に、裁判所関係者は「保釈率の高い、低いに正解はなく、弁護士、検察官の立場で評価も異なる。保釈の判断が形式的にならないよう、一件一件の事件の中身や被告の環境を具体的に検討することが重要だ」としている。

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