PR

想定外の被害、難しい復旧「見通し」情報発信に課題

PR

停電戸数と復旧見通しの推移
停電戸数と復旧見通しの推移

 千葉県を中心に大規模停電をもたらした台風15号では、東京電力は再三にわたって復旧の見通しを修正した。利用者に安心を届けるため情報を早く伝えようとしたが、想定を超える被害に全容把握がままならず、結果的に混乱を招いた形だ。今回の鉄道の計画運休でも当初の運行再開の予定からずれ込む路線が出た。企業による情報発信の在り方をめぐる課題が浮かぶ。

「過小な想定」と反省

 9日早朝、千葉に上陸した台風15号では、最大約93万戸が停電。東電は10日の段階で全面復旧は「11日中」との見方を示した。だが、翌11日に「13日以降にずれ込む」と修正。13日には「最長でおおむね27日まで」との見方に変えた。

 なぜ二転三転したのか。「台風の規模が今まで以上に大きいことをしっかり考慮できず、過小な想定をしてしまった」。東電側は反省点を指摘する。

 東電によると、復旧の見通しは現場の状況を徹底的に調査した上で算出するものではなく、これまで経験している災害の被害規模を基に1日の作業量を加味して出している。あくまでも想定の域を出ないものだ。

 今回は現場の状況を確認したところ、電柱の倒壊が相次ぎ、さらに土砂崩れや倒木で現場に入れないといった「想定外」が重なり、修正を強いられた。

 東電の担当者は「すべての状況を把握した上で見通しを示すと、発信がかなり遅くなる。今後、どう説明していけばよいのかしっかり検討したい」と語る。

できることを発信

 専門家も今回の台風被害が予想以上だったことは認める。

 電力問題に詳しいNPO法人「国際環境経済研究所」の竹内純子主席研究員は「広範囲で設備が損傷する異常な状況だった。ただ、社会の電力への依存度は高く、プレッシャーも大きい中で東電が情報発信を急いだ感がある」。

 危機管理広報に詳しいコンサルティング会社「エンカツ社」の宇於崎(うおざき)裕美氏も「東電は希望的観測の下で期待を抱かせてしまうような情報発信をした」と指摘。「重要なのは最悪のシナリオを想定すること。長期化する見通しが示されていれば、住民の自助努力の在り方も変わっていたはずだ」

 一方、台風が関東に上陸したのは平成28年8月以来。その前となると17年8月にさかのぼる。こうした状況から、見通しを示す際の過去の経験値が東電に乏しかった側面がのぞく。

 東電側も経験の乏しさを認めた上で「今後、この(被害の)知見を最大限生かしていきたい」とする。

 そもそも正確な被害状況を把握すること自体が困難な大規模災害。復旧の見通しを示すのが早ければ正確性を欠き、遅ければ不安を招くことになる。

 宇於崎氏は「憶測を述べず、分からないことは分からないと言うことも必要だ。住民の不安は、取り得る策や応援要請の状況など『自分たちが確実にできること』を丁寧に発信していくことで解消すべきだ」と提言している。

計画運休でも課題

 情報発信をめぐっては、あらかじめ運行中止を決める鉄道の計画運休でも課題が露呈した。

 鉄道各社は気象庁や民間の気象情報会社から情報を入手。それぞれの路線の位置と照らし合わせ、雨量や風速の程度を勘案するなどして、おおむね1日程度前に再開時期を含めた計画を利用者に示す。

 ただ、今回の台風15号は進路予測などが直前まで変動した上、線路や施設の破損をあらかじめ予測するのは困難で、各社の運行再開が大幅にずれ込んだ。

 JR東日本は首都圏在来線で9日始発から午前8時ごろまで運転を見合わせると発表。ただ、予定通り運行再開できた路線はほぼなく、担当者は「飛来する障害物や災害の規模を完全に想定するのは極めて難しい」と吐露する。京王井の頭線も倒木の影響で9日朝の再開見通しが午後1時すぎに。担当者は「今回の台風は刻々と状況が変わった。安全確認は多岐にわたり時間を要する」と話す。

 鉄道評論家の川島令三氏は「確実な見通しを示すことは難しい。ただ、再開に向けた点検や復旧作業の効率化を図るなどし、より見通しに近づけるような努力は必要だ」と話している。

この記事を共有する

おすすめ情報