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【復活への針路~関空被災1年】(下)増えたプレーヤー 不安定な運営

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 昨年9月4日に襲来した台風21号の対応をめぐり、関西国際空港を運営する関西エアポートが開いた役員会では、旧態依然としたやりとりが繰り広げられていた。日本人とフランス人の役員が通訳を介して話し合い、迅速な判断ができない。「意思疎通に困難があった」。山谷佳之社長が振り返った。

 関西エアにはオリックスと仏バンシ・エアポートなどが出資しており、平成28年4月に運営権を取得した当初から、日仏間の連携不足が指摘されていた。社長・最高経営責任者(CEO)にはオリックス出身の山谷氏が就いたが、バンシ出身の副社長には「共同最高経営責任者(Co-CEO)」という耳慣れない肩書が付き、事実上の2頭体制となっていた。

 航空会社との関係をめぐる摩擦もあった。オリックス出身役員は「発着便数の多い航空会社を特別扱いすべきだ」との考えだったが、バンシ側は「すべての会社を対等に扱うべきだ」と主張したという。

 こうした特殊な経営形態が、関空の防災に影響を及ぼしたのだろうか。

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 台風21号の対応で関西エアは、一時8千人が孤立した利用客への対応を優先。被害状況や復旧の見込みなどの連絡をせず、滑走路の再開が後手に回ったことから、航空会社の不満が噴出した。

 空港運営に外資を取り入れたことは、世界の先進的な取り組みとも合致するが、経営をめぐる文化や言葉の壁は乗り越えられたとはいいがたい。被災後、関西エアは、災害時には社長1人に権限を集中させることを決めた。

 昨年から関空、伊丹(大阪)に神戸を加えた関西3空港を一体運営している関西エアにとっては、地元自治体などの“プレーヤー”が増えてきたこともネックだ。台風21号では、関空の国際線機能を伊丹と神戸で代替することも検討され、「3空港の活用は災害リスク回避の観点からも急務」との認識も広がった。

 だが、山谷社長は「関空で外国人を受け入れ、関西各地に送り出すビジネスモデルをさらに追求したい」としており、関空第1ターミナルの改修を最優先課題と位置づけている。

 空港運営に詳しい関西学院大の野村宗訓(むねのり)教授は「長期的な需要予測や投資の青写真を明確に示すことが、関西エアには求められている」と指摘する。

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 関空は、国が全額出資する新関西国際空港会社に所有権があり、民間の関西エアに運営権がある。「コンセッション方式」と呼ばれるこの形態では、民間の経営手法を取り入れて質の高いサービスを提供できるメリットはあるが、プレーヤーが足を引っ張り合うリスクは高くなる。

 懸念が現実になった事例が、海外にはある。

 ロンドンの北約50キロに位置し、旅客数が英国で5番目のロンドン・ルートン空港。2013(平成25)年8月、約8年間運営に携わってきたスペインのインフラ管理企業「アベルティス」が撤退した。

 アベルティスは英国のカーディフ空港やアイルランドのベルファスト国際空港など、空港事業から相次いで手を引き始めていた。ルートン撤退については「収益基盤の効果的な見直し戦略」と説明した。

 だが、ルートンは格安航空会社(LCC)「イージージェット」が本拠地とするなど、競争の激しいロンドン周辺の空港でも著しい成長を続けていた。

 見切りをつけた本当の理由として一部で指摘されているのが、空港施設を所有する地元自治体との確執だ。自治体側が収容能力の倍増を要請したのに対し、同社は投資に慎重な姿勢を示していたという。

 関西エアは、内外のプレーヤーとどう折り合いをつけながら、関空を運営していくのだろうか。手腕が問われている。

 牛島要平が担当しました。

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