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【西日本豪雨1年】水没の工場に廃業覚悟 取引先の温情で事業継続

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自社で修復した竹の切削機械を指す、テオリの中山正明社長=6月27日、岡山県倉敷市真備町(織田淳嗣撮影)
自社で修復した竹の切削機械を指す、テオリの中山正明社長=6月27日、岡山県倉敷市真備町(織田淳嗣撮影)
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 水につかった機械、泥にまみれた製品…。1年前、西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町にある木工商品製造販売会社「テオリ」の社長、中山正明さん(65)は、変わり果てた工場を前に途方に暮れた。廃業も視野に入ったが、集めた従業員を前に「事業継続」を宣言。取引先の温情に力を得て、「真備特産の竹を使った製品を絶やしたくない」と前を向く。

 ■止まった時計

 2階まで冠水した自宅から避難し、親戚宅で一夜を過ごしたのが昨年7月7日。幸い、従業員やその家族は無事だったが翌8日、従業員約10人とともにやっとの思いでたどりついた会社を見て、絶句した。

 辺り一面が水につかり、トラックは100メートル以上流されていた。窓から工場内をのぞくと、機械は泥にまみれ、作りかけの製品もぐちゃぐちゃのがれきと化していた。事務所の時計の針は、水没したとみられる6時37分を指したまま止まっていた。

 家具メーカー勤務を経て平成元年に独立し、立ち上げた会社だった。少しずつ規模を拡大し、従業員は総勢27人に。真備産の竹を使った家具には、オンリーワンの自負もある。

 だが、豪雨の被害はあまりに甚大だった。工場の統廃合、あるいは廃業-。9日午前9時、会社の外に社員を集めた。そこで宣言したのは、「事業の継続」だった。

 「ここでやめたら、真備の竹を使ったインテリア製品はなくなってしまう。それだけは避けたかった」

 ■取引先の温情

 まずは従業員を安心させようと、「給与は今まで通り払う」と約束した。

 だが、復旧作業を始めようにも、電気や水といったインフラは壊滅状態。汚れた設備を洗う機械はもちろん、洗浄するためのきれいな水もなかった。

 手を差し伸べてくれたのは、取引先だった。窮状を伝えると洗浄機を用意し、水をためるタンクも送ってくれた。機械を動かすための発電機もだ。

 温情にも触れた。8月に品物を納入予定だった「ホテルグレートモーニング」(福岡市)にキャンセルを申し出たところ、「4カ月待つ。いいものを作ってほしい」と励まされた。「この言葉で、何とかしようと思った」。思い出すと、今でも涙が出る。

 従業員総出で復旧作業に当たった。12月まで猶予をもらったホテルへの納入は、10月初旬に実現させた。

 ■語り部として

 「損害は2億円弱だが、数年前に保険を総合保険に切り替えていて、復旧資金の4割をまかなえた。業務用パソコンは冠水したが、2階のサーバーにデータを保存しており復旧を早めることができた」

 中山さんは最近、被災体験の「語り部」として講演活動に取り組み、企業経営者として災害に必要な備えなどを語る。地元の「真備船穂商工会」では副会長を務め、中小企業の補助金確保にも奔走している。

 「災害で失ったものはあるが、人のつながり、団結、パワーが得られた。今年を復興元年としたい」

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