産経ニュース for mobile

【精神疾患患者“囲い込み”】医療グループが複数の患者を劣悪な環境下に 風呂のないシェアハウスに居住

記事詳細

医療グループが複数の患者を劣悪な環境下に 風呂のないシェアハウスに居住

精神疾患患者“囲い込み”更新

 生活保護を受給する精神疾患患者の相談員として、窓口となる都内自治体の福祉事務所に特定の医療グループの職員が派遣され、多くの患者が同医療グループの精神科クリニックで公費が使われる「自立支援医療」を受けていたことが23日、分かった。元患者は相談員の助言でクリニックに通うことになり、通院をやめようとすると、「生活保護費を打ち切る」と虚偽の説明を受けたとしている。

<< 下に続く >>

 医療費を獲得するため、福祉事務所が患者の“囲い込み”の場になっていた可能性があり、産経新聞は取材を申し込んだが、医療グループは23日までに回答を寄せていない。

 一方、この医療グループは複数の患者を風呂のない狭いシェアハウスに居住させるなど劣悪な環境下に置いているとして弁護士らが近く、改善を指導するよう厚生労働省に申し入れる。

 相談員などの名称で自治体に職員を派遣しているのは、都内で4つの精神科クリニックを開設する医療グループ。各自治体に聞き取り調査をした結果、東京都大田区、江戸川区、港区の計3区の福祉事務所で相談員の派遣を受けていた。

 このうち江戸川区は平成19年度からクリニック側と随意契約を結び、今年度は区内3カ所の福祉事務所に1人ずつ計3人の派遣を受ける。相談員は窓口で患者の相談や、患者の家庭訪問などを担当。区内の生活保護受給者でこのクリニックに通う患者は44人に上る。

 また、大田区では19年度から4人、港区では24年度から1人、それぞれ派遣を受けていた。いずれの区も「一医療機関のみを優先的に紹介することはない」とするが「専門分野があり、結果として随意契約を結ぶクリニックを薦めるケースはある」(大田区担当者)とする。一方、元患者の1人は通院をやめた際、相談員から「生活保護費を打ち切る」と虚偽の説明を受けたと証言している。

 患者は医療費が軽減される「自立支援医療制度」を利用し、自己負担なしで通院治療やデイケアを受診。医療グループ側には1日10時間のデイケアで、1万円が自立支援医療費(精神通院医療)から支払われる。

 厚労省によると、同医療費は20年度は約1482億円だったが、25年度は2092億円と約1・4倍に増加。同省精神・障害保健課は「福祉事務所での対応は自治体の裁量に任されているが、通院などは患者の意思に基づいている必要がある」としている。産経新聞はクリニックに対し患者の獲得手法や住環境などについて質問状を送ったが、23日までに回答はなかった。

 ■自立支援医療制度 障害者自立支援法に基づき、心身の障害を除去・軽減し、就労を目指す障害者の一部医療費を都道府県と国が負担する制度。平成18年度に国が導入した。患者の医療費負担は通常、3割だが、対象となる精神障害者は「精神通院医療」の名目で通院時の自己負担が原則、1割となる。生活保護受給者の自己負担はゼロで、全額公費で賄われる。各福祉事務所は、生活保護受給者が制度の適用を受ける際の申請窓口となっている。