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新貧困ビジネス? 暴力団、ホームレスをドナーに

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新貧困ビジネス? 暴力団、ホームレスをドナーに

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 臓器売買に絡み、またも暴力団幹部が逮捕された。今回、暴力団幹部が臓器を買い取るために臓器提供者(ドナー)の標的としたのは、ホームレスの男。警察当局は、生活保護費の詐取など“貧困ビジネス”にたけた暴力団が臓器売買にも触手を伸ばしたとみて警戒を強めている。

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 臓器移植法違反などの疑いで逮捕された為貝雄一容疑者は平成18年ごろから、ホームレスとして東京・JR池袋駅西口にある公園に寝泊まりしていた。

 その近所にいた組幹部の吉田昭容疑者が現れたのは24年ごろ。将来、ドナー候補として目を付けられるともしらず、為貝容疑者は風呂に入れてもらったり、食事をおごってもらったりと、吉田容疑者にかわいがられた。捜査関係者によると、吉田容疑者は知人の男が腎臓を患っているのを知り、200万円の支払いを条件にドナーとして為貝容疑者を男に紹介し、養子縁組をさせた。

 臓器売買が摘発されたのは今回で3例目だ。23年には臓器売買を仲介したとして、警視庁が暴力団幹部や医師を摘発。いずれの事件でもドナーと患者の関係を親族と装っていた。

 日本移植学会の倫理指針で生体間臓器移植は原則、倫理委員会の審査が必要とされているが、親族間の場合は不要だ。

 厚生労働省の担当者は「親族間の生体間臓器移植は一般医療に当たり、住民票などの書類さえ整えば、医師には確認のしようはない」と説明。今回は為貝容疑者が警視庁に事情を話したことで発覚したが、この担当者は「話さなければ、そのまま手術していた可能性はある」と指摘する。

 日本臓器移植ネットワークによると、6月末現在で1万2496人が腎臓移植登録をしているが、ドナーは慢性的に不足。移植までの平均待機期間は14年半に及ぶ。今年1~6月に行われた腎臓移植は89件で、待機人数に遠く及ばない。

 患者に残された選択肢は、海外移植か、ドナーを自ら確保しての生体間移植だ。臓器をカネで確保する事件は、こうしたドナー不足から生まれている。

 捜査関係者は「今回の事件の組織的な背景は今のところみえない。ドナーを見つけるのはハードルが高く、臓器売買は“組織的なビジネス”としてはまだ成立していない」としながらも、「既存の制度の隙をつくのが暴力団。警戒が必要だ」と指摘している。