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【法廷から】危険ドラッグ常習のシェシェシェ男のブッ飛び人生 15歳から大麻・覚醒剤に手を染め…「孫悟飯になって一旗揚げよう」

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危険ドラッグ常習のシェシェシェ男のブッ飛び人生 15歳から大麻・覚醒剤に手を染め…「孫悟飯になって一旗揚げよう」

法廷から更新

 危険ドラッグの常習者は人気漫画「ドラゴンボール」の登場人物になりきっていた-。隣人女性の部屋に侵入しナイフで切りつけたとして、住居侵入と傷害罪に問われた無職、田中勝彦被告(32)の第2回公判が6月26日に東京地裁で開かれた。逮捕後の取り調べで「しぇしぇしぇのしぇ」と奇声を発し、送検時には報道陣のカメラに向けてピースサインを示すなど異様な行動を取った田中被告。この日の法廷ではハイテンションとは真逆な姿を見せたが、危険ドラッグの副作用については冗舌に語った。(太田明広)

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 ■踊りながら接見室に登場

 「調書の中で、手錠を外すために『界王拳(かいおうけん)』を使おうとしたとあるが、そうなのか」

 証言台の田中被告に向かって弁護人が尋ねると、「やったと思うが詳しく覚えていない」と返答。さらに「孫悟飯(そんごはん)になろうとしていたのか」との質問に対し、田中被告は黙ってしまった。弁護人は「調書の内容に明確な記憶がないのだね」と述べ、質問を終えた。孫悟飯はドラゴンボールのキャラクターの一人で、界王拳とは戦闘能力を高める技の一種だ。

 この日の法廷では被告人質問が行われた。「アダルトビデオの女優から(危険ドラッグの)パウダーを『吸って、吸って』といわれたので吸ったのか」「両親から『人の急所である眉間を狙え』とアドバイスされたのか」など、逮捕後に話した調書内容を確認する質問が検察、弁護側双方から相次いだ。

 ただ、田中被告は「覚えていない」「記憶にない」と明確に答えることはなかった。

 田中被告は、5月の初公判と同じ黒色のジャケットにパンツ姿で登場。髪は肩まで伸び、頬がこけてげっそりしていた。感情をあらわにすることもなく、返答に覇気がなかった。裁判長から「もう少し大きな声で答えて」と注意を受けても変わらなかった。

 弁護人によると、田中被告は逮捕後の初めての接見の時に、踊りながら入ってきたという。送検時にも報道陣にピースサインをするなど、ハイテンションの姿からは、この日の田中被告はまるで別人のようだった。

 ■「理性がぶっ飛び感情が爆発する」15歳から薬物使用

 田中被告は昨年12月3日、東京都世田谷区の自宅アパートの隣室に玄関から侵入し、居住者の女性=当時(37)=の顔や頭をナイフで複数回切りつけ軽傷を負わせたとしている。警察官が現場に駆けつけると、「オレが刺したんだよ~」と犯行を認めたため現行犯逮捕。「薬やっちゃった~」と危険ドラッグの使用も認めていたが、検察は「『違法薬物だと知りながら使用した』という違法性の認識を立証できる証拠が集まらなかった」として立件を見送った。

 初公判で、田中被告は犯行について「やったと思うが覚えていない」と証言。弁護側は事実関係を認めた上で、「心神喪失だった」と刑事責任能力を争う方針を示していた。

 検察側が明らかにした調書などから事件を振り返ってみた。

 田中被告は15歳から大麻や覚醒剤を使い始めた。嫌なことを忘れたい時に自慰行為をするために覚醒剤より入手が容易な危険ドラッグを使用するようになった。

 「いつかは捕まると思ったがずるずると使ってしまった」と証言。そのうち感情のコントロールが利かなくなり、「理性がぶっ飛んで感情が爆発する」という状態になったという。

 薬物使用などで服役経験もあり、犯行時は生活保護を受けていた。昨年5月ごろ、隣人の女性に洗剤を配った。「隣人女性の体臭がひどく、どうにかしてもらいたかった」という。体臭を気にして、隣人女性を疎ましく思うようになっていた。

 一時、危険ドラッグの使用を我慢していたが、昨年6月ごろ気分が落ち込み再び手を出すようになった。犯行前夜の12月2日の夜、通常よりも多くの危険ドラッグを吸って、「孫悟飯になって一旗揚げてやろう」と思ったという。その後犯行に及んだ。

■「天井に人が見えた」

 「自宅のドアを開けたあと、気づいたら取調室だった」と証言し、犯行の状況は記憶にないとした田中被告。一方で、被害者の証言から犯行の残忍さが明らかになった。

 被害女性は調書のなかで、「玄関のチャイムが鳴ったので(外を見ると)田中被告が立っていた。部屋のなかに入ってきて台所からナイフを取り出して向かってきた。急いでユニットバスに逃げて両手を出して『やめて』と叫んだが切りつけてきた」と振り返った。10数カ所の傷があり、「殺されると思った。できれば長く刑務所に入ってほしい」と現在の心境を語った。

 この日の法廷で唯一、田中被告が冗舌に語ったシーンがあった。

 検察官「幻覚や幻聴の経験はあるのか?」

 被告「はい。天井に影がみえた。幽霊みたいなお化けではなく、人がみているようだった」

 検察官「(危険ドラッグを)使っていないときでも幻覚を見ることはあるのか」

 被告「事件直前の(昨年)11月に幻覚が見えたので入院した」

 検察官「どのようなものが見えたのか」

 被告「以前に会った人が現れ、監視しているのではないかと思った」

 検察官「その瞬間も幻覚や幻聴だと分かるのか」

 被告「分かった。(頭が)おかしいのではないかと病院に行った」

 検察官「感情が爆発して人を殺してしまおうと思うことは」

 被告「頭がおかしくなって殺してやろうとは思うけど、実行はしない」

 危険ドラッグの副作用のについて冗舌に語った田中被告。危険ドラッグの危うさが改めて浮き彫りになった。人生の半分近くで薬物を使用してきた被告だが、裁判の争点とは別に、どのように今後立ち直ることができるのかが気になった。

 次回の7月9日の公判では、田中被告に精神鑑定を実施した鑑定人の証人尋問が実施される。被告の責任能力があるのか、ないのか。再び注目が集まる。