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電力需給逼迫の舞台裏 九電、綱渡りの安定供給維持 「仕向地」除外調整も

電力需給バランス維持の司令塔となっている九州電力の中央給電指令所
電力需給バランス維持の司令塔となっている九州電力の中央給電指令所

 新型コロナウイルス感染拡大の陰に隠れているが、昨年末から、もう一つの危機が浮上している。電力需給の逼迫(ひっぱく)だ。大規模停電こそ起きていないが、液化天然ガス(LNG)の調達不足や寒波襲来など複合的な要因による今回の電力危機を「災害級」と評する声もある。九州電力管内では大型の石炭火力発電所で想定外のトラブルが相次ぎ、まさに綱渡りで電力供給を維持した格好だ。その緊迫の舞台裏を探った。(中村雅和)

 ■想定外

 逼迫の最大の原因として挙げられるのは、電力各社のLNG調達不足だ。輸出国側の設備トラブルやパナマ運河の混雑に伴う輸送の長期化、中国での需要急増などが重なってLNGの不足を招き、供給力の低下を招いているとする。ただ、現実はそう単純ではない。

 LNGは石炭のように簡単には在庫を積み上げられない。マイナス162度の超低温で液体にして輸送・貯蔵し、その間に気化するLNGは長期保管に不向きだからだ。九電は発電所ごとに約12万トンのタンクを持ち、フル稼働すれば1日あたり1万トン程度を消費する。このため、おおよそ2週間に1度のペースでタンカーが入港している。

 電力各社は、中長期的な需要予測に基づき長期の輸入契約を結んでいるが、電力自由化に伴う顧客流出による自社の需要減少といった環境変化が著しい。余剰を転売することもあるが、LNG市況次第で巨額の売却損を計上するリスクを抱える。コロナ下での電力需要の落ち込みは環境変化を加速させ、LNGの在庫管理を難しくしていた。

 ■石炭火力のトラブル

 それでも九電は昨年12月初旬時点で気温や電力需要を予想し、LNGを確保するめどをつけていた。

 ところが同29日、最新鋭石炭火力である松浦火力発電所2号機(長崎県西海市)でトラブルが起き、出力が50万キロワットに半減。代わりにLNG火力の焚き増しを余儀なくされ、LNGの消費量が想定を超えた。加えて寒波襲来も予想されたことでLNG在庫の逼迫が懸念された。生産国への要請から2カ月程度はかかる平時の追加調達の仕組みでしのぐ余裕はなかった。

 このため九電はLNG確保に奔走。緊急時のために確保していた在庫を使用するのはもちろん、他業界のLNGタンクから一時的に借りた。それだけでは足りず、日本近海を航行中のLNGタンカーについて輸入元企業に融通を要請したほか、荷揚げ後に残った少量を買い取るなどしてかき集めた。

 LNGの場合、荷揚げ地を限定して転売を禁じる「仕向け地条項」を売買当事者間で結ぶケースが少なくない。九電は、本来の輸入元企業と協力し、生産国に対し条項の不適用を求めた。幸い、いずれも窮地に理解を示し、特例として許可されたという。

 危機に拍車をかけたのは年明け1月7日に発生した電源開発の石炭火力、松島火力発電所2号機(同)の停止だ。50万キロワットの一部を受電している九電の供給力も下がった。折からの寒波で九電管内では冬季の最大電力量を更新し、需給バランスは崩壊寸前に。大型の発電所でさらなるトラブルがあれば、大規模停電もあり得た。その後も電力需要が想定を超えるケースが続き、九電など電力各社は、わずかな供給力の余裕を融通し合うことでギリギリの綱渡りをしのいだ。昨年12月15日から今年1月16日にかけ、地域をまたいだ電力融通は全国で計218回実施された。これは近年まれに見る多さだ。

 寒波はやわらいできているが、九電は現在も需給逼迫への警戒は維持する。担当者は疲労感をにじませ、こう打ち明けた。

 「今回は東日本大震災後の原発停止時より厳しい」

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