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【群馬・年末記者ノート】群馬交響楽団、ネット配信に飛躍の可能性

12月3日に行われた「コバケンと群響 音楽の喜びの贈り物」。公演再開後、小林研一郎ミュージック・アドバイザーが初めて高崎芸術劇場でタクトを振った(椎名高志撮影)
12月3日に行われた「コバケンと群響 音楽の喜びの贈り物」。公演再開後、小林研一郎ミュージック・アドバイザーが初めて高崎芸術劇場でタクトを振った(椎名高志撮影)
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 新型コロナウイルスに揺れ続けた1年だった。節目の創立75周年を迎えた群馬交響楽団(群響)にも大きな影響が及んだ。半年間にわたり5回の定期演奏会をはじめ100回を超える演奏会などが中止を余儀なくされ、26年ぶりに実現するはずだった海外公演も流れた。そうした中、多くの団員が取り組んだのが「おうちで群響」だった。

 団員が自宅などで撮影した思い思いの演奏映像を動画投稿サイト「ユーチューブ」の群響専門チャンネルなどで公開したもので、「自宅にいながら群響を身近に感じ、音楽を少しでも楽しんでもらいたい」との願いを込めた。4月14日からスタート、最終的には61本がアップされた。

 その全てを鑑賞したわけではないが、8月28日にアップされた第59弾「群響とラデツキー行進曲」には感動した。「たくさんの方に応募していただいた夢の動画プロジェクト」と銘打ったコラボリモート演奏だった。

 一般の人110人を含む総勢159人が144に分割された画面に登場。バイオリン、ピッコロ、パーカッションなどの楽器はもちろん手拍子でも参加していた。パソコンから流れる音は生の音と比ぶべくもないが、参加者の表情は実に楽しそうだった。なぜか鼻の奥が少しだけツーンとした。

 群響は「日本の地方オーケストラの草分け的存在」と言われる。昭和20年に誕生した「高崎市民オーケストラ」が前身。「戦後のすさんだ心を音楽で癒やしたい」などの思いがあったという。創設期の様子は映画「ここに泉あり」で描かれ、全国的に注目された。ちなみに、「ここに泉あり」は高崎電気館で年6回、不定期ながら無料で上映され続けている。

 昭和22年5月からは、児童生徒を対象に学校などで行う移動音楽教室がスタート。現在まで続く群響の活動の柱で、3年に1度は生の音に接する機会がある。令和元年までに641万人が鑑賞した。

 多くの県民にとって身近な存在になっている群響だが、「おうちで群響」の取り組みはファンとの距離をさらに縮めることにもなった。

 「ネットでつながれるという発見は、演奏会を聴いてもらうことにプラスして、楽団との一層の交流に結びつけるツールになる」と評価するのは30年余の群響バイオリン奏者で現在は群響常務理事兼音楽主幹の渡会裕之さんだ。2月26日に出された政府のイベント中止延期要請で意欲を失った団員にとっても「演奏を聴いてもらうことでモチベーションの維持ができた」と話す。

 「群響は群馬の宝。世界に誇れるオーケストラにしたい」が関係者の合言葉だ。高崎芸術劇場という一流のホールは完備されたが、楽団の規模や質的向上、海外からの優秀な指揮者の招致など多くの課題があるのは事実。解決するにはまだ時間はかかるが、さまざまな知恵を絞りながら、100周年に向けて大きく飛躍することに期待したい。(椎名高志、写真も)

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