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理解進まぬ電力の容量市場 6年度新設、安定供給のコスト可視化

記者会見する電気事業連合会の池辺和弘会長
記者会見する電気事業連合会の池辺和弘会長

 中長期的な発電能力の確保を目的として、国が令和6年度に新設する制度「容量市場」をめぐり、4年後を対象とした初入札の結果が9月に公表されて以降、単価の妥当性などについて議論が沸き起こっている。電力量ではなく、発電能力に値を付ける仕組みは、将来的な安定供給を維持する上で意味を持つ。ただ、複雑な制度設計の理解が進んでいるとは言い難いのが実情だ。(九州総局 中村雅和)

 「発電所の建設・維持をしないと将来的に電気が不足し、(電気料金が)高くなる。この誰にとっても不幸な状況を回避するため容量市場が生まれた」

 16日、都内で開かれた電気事業連合会の定例記者会見で、池辺和弘会長(九州電力社長)はこう強調した。

 7月に初めて実施された入札では全国で1億6769万キロワット分、総額で約1兆6千億円が約定した。市場管理者の電力広域的運営推進機関(広域機関)が小売事業者などから、この額を拠出金として回収して発電事業者などに支払う。

 9月上旬、この結果が公表されると業界に衝撃が走った。1キロワットあたりの約定価格(1万4137円)が当初設定されていた上限値(1万4138円)とほぼ一致したからだ。

 発電事業者側は「単年とはいえ、設備投資は回収可能だ。この水準が継続すれば将来的な投資計画にも前向きになれる」と評価したが、一方で、小売事業者は「負担が過大で、事業継続が難しくなる」と批判の声を上げた。

 ■「フリーライダー」

 確かに、小売事業者にとって拠出金の支払いは負担となり、コストを電気料金に転嫁して回収を図ることもあり得る。小泉進次郎環境相は2日、記者会見でこの問題に触れ「国民の負担がこれから上がる可能性が非常に高い。電力料金のアップになって返ってくる」と発言した。一部メディアは平均家庭で月500円程度の負担が増えるなどと報じた。

 ただ、容量市場は電力供給全体に関わる費用の中で、発電所を建設、稼働させ安定的な供給体制を実現するための設備投資コストを可視化しただけだ。

 発電所を持たず、電力卸市場などに調達を頼る小売事業者が、容量市場新設による負担増を「経営上の問題」と不満を訴えるのは、安定的な供給体制維持に金銭的な責任を負わない「フリーライダー」だったと表明するに等しい。

 ■制度検証これから

 梶山弘志経済産業相は2日の閣議後会見で「小売事業者が支払う対価が内数として明確化されたもので、国民への追加的な負担を意味するものではない」と説明した。池辺氏は16日の会見で「梶山大臣の発言は正鵠(せいこく)を射ている。総括原価方式から、(自由化の進展で)回収の仕方が変わったということが正しい」と指摘した。基本的に新たな費用が生じたわけではないのだ。

 もちろん、今回の約定単価が、米国などの同種の仕組みを先行して整備する海外諸国と比べ数倍の高値だったことなど、見直しが必要だと思われる課題も見えており、経産省は検証を始めている。池辺氏は「意見があること承知している。電力業界も検証に協力していきたい」と述べた。

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【プロフィル】容量市場

 電力広域的運営推進機関(広域機関)が市場管理者となり、将来の需要想定をもとに、日本全体で確保したい発電能力(供給力)を示し、発電事業者などが量と単価を入札する仕組み。電力システム改革の一環として瞬間的な電力量を取り引きする卸電力取引と並行して国が制度設計を進めていた。入札時から4年後の1年間、約定した単価で、発電能力に応じて収入が確定する。発電事業者にとって予見性が高まり、設備投資が進めやすくなる。

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