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台風19号1年 復旧の兆しも…一部で戦い続く インフラ、浸水補償など課題山積

 未曽有の豪雨で県内に甚大な被害をもたらした昨年10月の台風19号(令和元年東日本台風)の上陸から12日で1年が経過した。各地で発生した浸水や土砂崩れなどの被害は復旧が進み、箱根登山鉄道が予定を前倒しして7月に全線運転再開するなど、県内の被災地はここにきてようやく台風前の姿を取り戻し始めている。ただ、今も自宅に帰ることができない住民や浸水の補償問題、収蔵品の修復に「10年かかる」とも指摘される美術館など、災害との戦いは今も一部で続いている。(外崎晃彦、太田泰、浅上あゆみ)

 ◆川崎 

 多摩川に排水できなかった雨水の逆流と支流の氾濫による浸水被害が相次いだ川崎市では、避難所が158カ所設けられ、ピーク時には3万3150人が避難した。市営住宅などへの一時的な転居は最大68戸に上り、現在も2戸が入居を続けている。当初は受け入れ期間を最長6カ月としていたが、新型コロナウイルス感染拡大による住宅難の状況などを鑑みて延長した。

 多摩川に排水できなかった雨水が排水管を逆流して市街地にあふれ出た問題では、市は逆流を起こした水門(ゲート)などに水位計やカメラを設置し、内水排除のための排水ポンプ車を4台導入。手動だったゲートの開閉操作は電動に切り替えるなど、ハード面の改良を行ってきた。

 一方、被災住民には、浸水の発生原因や今後の対策などを伝える住民説明会を開催してきた。市は逆流について「ゲートの開閉作業はマニュアル通りだった」として対応に問題はなかったとの認識を示しているが、住民らは市の責任を問う提訴を予定している。

 美術品の地下収蔵庫が水没した市市民ミュージアムでは、収蔵品約26万点を外部倉庫などに搬出。洗浄やカビ取りの修復作業が続いている。修復完了には「10年かかる」との見通しもあり、施設再開のめどは立っていない。

 福田紀彦市長は6日の定例記者会見で「短期的な対策でやるべきことはやってきた」としたうえで、今後も浸水対策に取り組んでいく決意を示した。市内では、浸水したマンションの1階に住んでいた60代男性が死亡。住家被害は全壊33件、半壊948件、床上・床下浸水は計1669件におよび、非住家被害は48件だった。道路や河川など公共関連の被害総額が約157億円、製造業や住宅など民間関連の被害額は約128億円に上った。

 ◆相模原 

 土砂崩れによる家屋倒壊や道路寸断、豪雨による建物の浸水など、多くの被害が出た相模原市では、被災住民の生活やインフラの立て直しはなお道半ばだ。道路は現在も全面通行止め7路線、通行規制5路線が残る。全てが緑区にあり、市の担当者は「いまも着々と工事を進めている」。一方、東京五輪で自転車ロードレースのコースとなる予定の国道413号については、3月末までに完全復旧。市の担当者は「コースとして問題なく使える」と胸を張っている。

 市内で発生した土砂崩れは計216カ所。大部分は原状回復したが、夫婦2人の死者を出した緑区の牧野地区など、市内の複数箇所ではまだ復旧作業が続いている。住居被害により、なお自宅に帰ることのできない市民は17世帯32人。市内の賃貸型応急住宅での生活を余儀なくされている。

 市は5月にとりまとめた「復旧・復興ビジョン」のロードマップに基づき、今後も住民支援やインフラの整備を進めていく予定だ。

 本村賢太郎市長は2日の定例記者会見で「今も一部の市道や農地、学校施設では復旧に向けた取り組みが続いている」と現状を説明。「『復旧・復興ビジョン』にもとづき、着実に取り組みを進め、市民の安全安心を確保していく」と力を込めた。災害発生から1年となった12日、本村市長は市内の被災現場を訪れ、献花を行った。

 市内では、台風上陸前から豪雨が続き、緑区の旧津久井郡4町地域の山間部などで甚大な被害が出た。市内全体の人的被害は死者8人、負傷者3人。建物被害は住家計199件、非住家157件。施設被害額は約78億円、産業被害額が約36億円、建物被害額が約24億円だった。

                  ◇

【用語解説】台風19号(令和元年東日本台風)

 令和元年10月12日午後7時前に大型で強い勢力を保ったまま伊豆半島に上陸した後、関東地方を通過し、13日未明に東北地方の東海上に抜けた過去最強クラスの台風。10日からの総雨量は箱根町で1千ミリに達し、気象庁は本県など13都県に大雨特別警報を発令。各地に大規模な河川氾濫や土砂災害をもたらした。県内の人的被害は死者9人(川崎の船舶事故を除く)▽重傷者3人▽軽傷者32人。気象庁は2月、被害が甚大だったこの台風を「令和元年東日本台風」と命名した。

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