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都民の消防官、5氏に栄誉

 昼夜を問わず、都民の生命と安全な生活を守るため職務に励む東京消防庁の消防官約1万8600人の中から、特に功績のあった消防官に贈られる「第73回都民の消防官」の受章者が決定した。選考では、東京消防庁が受章候補者10人を推薦。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、選考委員会を開かず、委員らがこれまでの優れた実績や人柄などの推薦理由を基に、書類選考で選出した。表彰式は、10月21日に千代田区大手町の大手町サンケイプラザで行われる。

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 ◆中野署消防司令補 松本明彦(まつもと・あきひこ)さん(57)

 ■特別救助のスペシャリスト

 特別救助のスペシャリストとして、二次災害が予想されるような危険な現場にも、ためらうことなく飛び込み、命を救う活動を続けてきた。

 今も記憶に鮮明に残る出動の一つが平成2年、板橋区の化学工場で従業員26人が死傷した爆発事故だ。特別救助隊に入って2年目の時だった。工場内の薬品に衝撃を与えると、さらなる爆発の危険もあり、緊張に緊張を強いられた。

 「どこから手をつけていいのか」。途方に暮れる自分を落ち着かせてくれたのは、冷静に淡々と対応する先輩たちの背中だった。「ともすれば、無謀な行動を取っていたかもしれなかった。人を助けるはずの自分たちが絶対にけがをしてはいけない」。そう胸に刻んだ瞬間でもあった。

 それから数々の経験を積み、自分が部隊を率いる立場にもなった。「1人では頑張っても受章はできない。指導してくれた人たちや下から支えてくれた人たちがいたからだ」。感謝を胸に、今日も現場に臨む。

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 ◆足立署消防司令補 大日向良治(おおひなた・りょうじ)さん(57)

 ■家族の気持ちで救命に疾走

 「確実な仕事をするのは当たり前」。昼夜を分かたず人命救助に疾走する。一分一秒を争う場面に知識や技術の全てを注いできた。「消防がやれることは限られている。大切なのは、傷病者だけでなく、家族にも声をかけて安心させること」。現場では「家族の気持ち」になって対応している。

 平成24年、大塚救急隊長として豊島区内の交番に急行。胸の苦しさを訴えた40代男性が、意識障害に陥っていた。現場に向かう途中から警察官に口頭で胸骨圧迫を指示。男性は心肺停止状態だったが、病院到着前に息を吹き返し、数日後には社会復帰を果たした。迅速な指示と確かな連携が実った結果だった。

 これまでの出動件数は約2万8千件にも上る。東京消防庁から、豊富な経験や知識を持った救急救命士「救急スペシャリスト」に認定されている。

 これからは経験の伝承が使命だ。「周りの信頼があって、ここまでこられた。いままで通り勉強や努力を続け、部下にも指導していきたい」と話した。

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 ◆丸の内署消防司令補 内谷公代(うちや・きみよ)さん(53)

 ■都内の防火対策一翼を担う

 平成3年の入庁以来、火災予防業務一筋の消防官人生を送ってきた。「予防係は法令順守が一番大事」。スペシャリストとして、火災予防の重要性の周知や消防法の法令違反の是正に携わってきた。

 平成21年1月に担当した飲食店火災では、店の消火栓設備が未設置だったことが判明した。ほかの系列店を含めて指導し、法令違反を全て是正。各地域の防火安全性を高めた。

 重要行事でも活躍を見せた。昨年は、皇位継承に伴う即位の礼の中心儀式「即位礼正殿(せいでん)の儀」や新天皇の即位後初の新嘗祭(にいなめさい)「大嘗祭(だいじょうさい)」に関係する建物の適切な消防用設備などについて、関係機関と連携を図りながら内閣府や宮内庁と協議。注目が集まる代替わり関連行事の安全確保に大きく貢献した。

 「慣れていても、どんな案件でも、何度も重ねて確認するようにしている」。努力を惜しまず、新しい技術の研究にも積極的に取り組み、周囲の信頼も厚い。今後も東京の防火対策の一翼を担っていく覚悟だ。

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 ◆北多摩西部署消防士長 諏佐政則(すさ・まさのり)さん(58)

 ■熟練の技、消火現場で発揮

 平成5年にはしご車を操作する機関員になって以来、日々その技術を磨いてきた。「バスケットを伸ばして放水や救助活動を行うはしご車は、作業可能な範囲を円柱状でイメージする必要がある」と極意を語る。

 熟練の技は確実に人命を救ってきた。13年には、新宿・歌舞伎町で44人が死亡する雑居ビル火災が起きたわずか2カ月後、今度は300メートルほど離れた別の雑居ビルで火災が発生。「同じ被害を繰り返してはいけない」。狭い道路で街路樹をよけながらはしご車を操り、煙に追われて4階のベランダに避難していた男女2人を救助した。

 火災発生直後の現場では、周辺の道路が通行止めになっていないことも多く、はしご車の操作には細心の注意を払う。「バスケットには常に隊員や要救助者が乗っている。普段の訓練から隊員同士のコミュニケーションは欠かせない」という。

 受章決定を受け、「改めて初心を思い出し、今後も間違いのない消防活動を心がけたい」と意気込んでいる。

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 ◆高輪署消防士長 塚原一夫(つかはら・かずお)さん(58)

 ■船舶火災や水難救助に活躍

 海上や河川で消火・救助活動にあたる「消防艇」に乗り込み、30年以上にわたって第一線で首都の安全を守ってきた。「船は1人では運航できない。一緒に乗船してくれたクルーのおかげ」と同僚に感謝した。

 平成19年10月には、中央区の晴海ふ頭で釣りをしていた男性が海に転落する事故が発生。消防艇「はるみ」の船長として出動し、素早い情報収集ですぐにおぼれた男性の場所を突き止め、救助した。この功績が評価され、消防総監賞を受賞した。

 消防艇は地上での火災でも活躍する。20年4月に足立区で起きた倉庫火災では、付近に水利が少ない厳しい環境の中で、隅田川を活用した長時間の消火活動で鎮火に貢献した。

 「ちょっとした油断が大けがにつながる。潮の流れや河川の深さなど小さな変化も見逃さない」。危険と隣り合わせの状況でも、船舶火災や水難救助の現場に敢然と立ち向かってきた。誠実で温厚な性格。豊富な知識と経験を生かし、後進の育成にも努めている。

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 ■「都民の消防官」協賛団体 三菱地所、東京ガス、サンケイビル、富国生命保険、東京都消防懇話会、東京連合防火協会、東京防災救急協会

 ■選考委員 委員長代行=安達晋・三菱地所管理・技術統括部長▽委員=大橋太郎・東京ガス広報部長、中野秀樹・サンケイビル事業本部ビル営業部長、鬼澤英生・富国生命保険業務部部長、荻原光司・東京都消防懇話会事務局長、田中勝久・東京連合防火協会専務理事、湯浅達也・東京防災救急協会事務局長、伊藤富博・産経新聞社事業本部長、中村将・産経新聞社社会部長

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