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【菅義偉の原点「影の横浜市長」と呼ばれて】(下)IR誘致めぐる主戦場に

 ■動向に注目、「根回し」暗躍 市になお影響 待機児童問題に先鞭も

 「影の横浜市長」の異名をとった菅義偉(すがよしひで)が横浜市議時代から「根回しの菅」として暗躍していた痕跡は、いまでも数多く残っている。自民党県連が入居する市内のビルが賃貸であるのに対して、党の市連ビルが自前であるという“ねじれ現象”が続いていることも、その一つだ。「菅さんが建設に一役も二役も買った」。当時を知る市議らは、そう口をそろえる。

 それまで市内のビル2階の1フロアを借りていたが、菅が「家賃がかかるので、市連の財産としてどこか探したほうがいい」と発案。自らが中心となって資金の調達などに奔走したという。

 ◆林市長と連携

 当時から横浜市議を務める田野井一雄は「土地の選定、事業者の選定、あらゆることに彼が渡りをつけた」と記憶している。

 現在、市が対策を進める待機児童問題に先鞭(せんべん)をつけていたこともよく知られている。菅自身も総裁選に向けた出馬表明会見で、「横浜市議時代に『横浜型保育室』を市長と一緒に作ったのが、私の一つの誇りだ」と述べている。

 菅が16日、首相の座に就いたことの影響は、横浜市民にとっては単に地元から首相が選出されたという慶事にとどまらない。

 市はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を目指しているが、菅はこれまでも官房長官の立場で、地元への誘致を推し進めてきたからだ。市長の林文子とも緊密に連携するなど、政権中枢から地元横浜の政界や経済界に大きな影響を与え続けている。

 ただ、林は菅の首相就任による市政への影響力の拡大には否定的な見方を示し、菅の首相選出が有力視されはじめた9月上旬の記者会見では、「個別に情報交換するという関係ではない」とも述べている。

 ◆「ハマのドン」

 菅のIR誘致への情熱には、首相だった安倍晋三も圧倒されていたようだ。関係者によると、安倍は菅や市議らを集めた会合で「(IRの設置場所は)官房長官のお膝元を通り過ぎません」と述べ、横浜は“当確”であると事実上明言したこともあったという。

 菅はあらゆる方面に対して根回しを徹底している。総裁選出馬表明に先立つ8月24日には、横浜港の港湾事業者「藤木企業」を訪問。地元事業者らで組織する「横浜港ハーバーリゾート協会」の会長で、誘致候補地の山下ふ頭からの立ち退きとIR誘致に猛反対している90歳の同社会長、藤木幸夫と社内の一室で会談している。

 同席した同社幹部や関係者らによると、会談時間は20~30分程度。小此木彦三郎の秘書時代や市議時代からの恩義があり、頭の上がらない藤木に対して、菅が歩み寄ったようだ。「ハマのドン」とも呼ばれる藤木は、それまでの考えを翻して、IR誘致に異を唱えはじめた数年前から、菅との関係を一気に悪化させていた。今年6月の産経新聞の取材でも、菅を「権力を腐敗させた張本人」などと苛烈な言葉で批判している。

 菅は首相になる前の足場固めの一環として、藤木との関係を修復し、今後のIR誘致の取り組みを円滑に進めたい思惑があったようだ。菅の藤木訪問によって、藤木の態度が今後どう変わるのかは、「根回しの菅」の腕の見せ所の一つといえそうだ。

 ◆関係修復に待った

 菅の「藤木詣で」は、すでにハレーションを広げている。9月9日には、立憲民主党代表の枝野幸男が藤木を訪問した。協会関係者によると、2人は初対面。来訪は枝野側が提案した。

 枝野は同日、記者らに対し、会談で藤木がカジノ反対への共闘を求めてきたと明かしているが、枝野にとっては菅と藤木の関係修復に待ったをかけたいというのが本音だろう。急激に再接近を図る2人の関係を前に、行動に移さずにはいられなかったと思われる。

 菅の首相就任によって、横浜が、IR誘致をめぐる主戦場になろうとしている。菅就任のインパクトは横浜、ひいては県内の経済にどう影響していくのか。その動向が注目されている。=敬称略

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 この連載は外崎晃彦、宇都木渉、太田泰、浅上あゆみが担当しました。

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