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川崎市ヘイト条例1カ月 規制の波、全国に広がるか 「表現の自由」への制約懸念も

 全国で初めて罰則を設けた条例を7月1日に全面施行し、ヘイトスピーチ対策に乗り出した川崎市。全国では同市に続こうとする動きがある一方、憲法で保障されている「表現の自由」を制約しかねない懸念などから二の足を踏む自治体もある。全面施行から1日で1カ月。刑事告発を受ける立場の警察からは、前例のない捜査に当惑の声が上がる。

 「市民が一緒になって人権尊重の街づくりをするスタートだ」。条例の意義を強調するのは、川崎市で反ヘイト活動を展開する「ヘイトスピーチを許さない かわさき市民ネットワーク」の三浦知人事務局長。「次に続く自治体が出てほしい」と期待を込めた。

 ◆相模原市でも

 県内では、相模原市でも罰則を設けた条例の検討が進む。背景には、昨年の統一地方選で外国人を排斥したり、危害を加えたりするとの街宣が繰り返されたことがある。本村賢太郎市長は同6月の定例記者会見で「川崎市に引けを取らないような厳しいものにしたい」との思いを述べた。

 平成28年に成立したヘイトスピーチ解消法は、自治体に「差別的言動の解消に向け、地域の実情に応じた施策」を求めている。だが、川崎市のように罰則を盛り込んだ条例の制定に、慎重な意見も根強い。

 神戸市は昨年6月、外国人差別抑止を目的とした条例を市議会主導で制定した。しかし、罰則や具体的な規制項目は盛り込まず、相談体制の拡充や啓発にとどまった。代表提案者となった吉田謙治市議は「全会一致で可決し、外国人への差別を許さない街だと示した意義はある」と強調する一方、「『表現の自由』の問題があると、まとまらない」と話す。

 ◆横浜市は静観

 名古屋市も3年前に条例の検討を始めたが、大きな進展はない。やはりネックとなったのは「表現の自由」。担当者は「大規模なコリアンタウンなどがない中で、必要なのかという意見も出ている」と打ち明ける。

 横浜市では新型コロナウイルス感染拡大のさなか、横浜中華街(横浜市中区)の複数の店に「早く日本から出ていけ」などと中国人を中傷する手紙が届いたが、市は「匿名で送られており、条例があっても防ぐのが難しい。検討はしていない」と静観の構えだ。

 ヘイト問題に詳しい師岡康子弁護士は「ヘイトデモがない地域でも、差別を受ける被害者はいる。条例を作ることで、自治体が具体的な対応を取る根拠になる」と指摘する。

 一方、川崎市でも、刑事罰の適用については手探りの面がある。違反者が勧告や命令に従わなかった場合、刑事告発されるが、立件するかどうかの判断は警察や検察に委ねられる。ある捜査幹部は「事件として立証するには、証拠が必要になる。言った言わないの世界になってしまわないだろうか…」と不安を口にした。

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【用語解説】ヘイトスピーチ

 特定の人種や民族、国籍、出身地、宗教などの属性を持つ者に対して「殺せ」「帰れ」「犯罪者」と差別したり、憎悪をあおったりする言動。東京・新大久保や大阪・鶴橋で、一部の団体が「朝鮮人を殺せ」などと叫ぶデモを繰り返して社会問題化した。川崎市では平成25年以降、デモが頻発し、国や自治体に取り組みを求める28年のヘイトスピーチ解消法制定の契機になった。

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