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九州豪雨で創業以来のたれに泥水 人吉の老舗うなぎ屋、再起誓い作業

豪雨被害を受けた「上村うなぎ屋」を片付ける上村恵子さん=12日、熊本県人吉市
豪雨被害を受けた「上村うなぎ屋」を片付ける上村恵子さん=12日、熊本県人吉市

 九州豪雨による濁流は熊本県人吉市の創業112年の老舗「上村うなぎ屋」にも押し寄せ、秘伝のたれが水につかった。「もうやめようか」。祖父の代から続く歴史が途絶えるかもしれないとの不安を抱きながら、観光客や地元住民に愛されてきた町の有名店は、再起に向け作業に追われる。

 4日午前7時半ごろ、3代目店主の上村由紀穂さん(70)の自宅周辺の道路は茶色く濁った水に覆われ始めた。「濁流に追いかけられるようだった」。一足先に家を出た妻、恵子さん(68)は、約50メートル先の店舗へと走った。店に着いた途端、水位は急上昇。恵子さんは3階へと避難し、別のビルに避難した上村さんと大声で無事を喜び合った。

 水が引き、店内に入った上村さんは、広がる光景にあぜんとした。天井の一部は落ち、倒れた業務用冷蔵庫やいろりは泥まみれ。土日の客入りを見込んで仕入れたウナギ約600匹は散乱し、多くが死んでいた。創業時から続くたれが入ったすり鉢には泥が混じっていた。

 新型コロナウイルスの影響で2月から激減した客足は、最近になってようやく半分ほどに戻ったばかり。被災前夜には傘を差す人々が店舗前に行列を作った。

 昭和40年と47年の大雨で床上浸水を経験した際には水位の上昇は遅く、たれを2階に運ぶ余裕があった。「復帰できないかも」。店舗の無残な姿に、夫婦の頭には廃業という選択肢が時々頭をよぎった。

 しかし、連日作業する従業員らの姿に背中を押されている。「たれの作り方は俺の頭に入っている。うなぎ屋しかできませんから」。上村さんは自身に言い聞かせるように、うなずいた。

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